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誰がガールズバンドを殺したか?

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 そんなこんなで一学期は最悪の終わり方だった。失恋と裏切りのショックで勉強が手につかず、期末テストでは最悪の点数をとってしまい、補習を受ける羽目になった自分の身の因果を、私は嘆かずにはいられなかった。同じく数学で赤点をとったらしい茜も補習では一緒で、「もーいいじゃんよォ…。あんなふわふわしたクソ女になびくクソ男なんてさ」などと顔を合わせるたびに怨嗟の声をあげる私を慰めてくれた。
 夏休みに入ってからは時折茜と二人で出かけたりしていたが、前述した通り基本的には家でダラダラして過ごしていた。
 机の上に足を乗せ、反り返ると、部屋の隅に置いてあるギターが目に入った。
「アンタには悪いけどさぁ、今私なんにも歌いたくないよ…」
 ギターに話しかけてもしょうがないし、ギターだって困るだろう。ただ、なんらかの形でこのやるせない思いを発散したいのは事実だった。
 今、テレビもラジオもネットもアイドルばかり。世間はどうにもアイドルブームのようだった。キラキラした女の子たちがキラキラした衣装を身にまとって光に満ちたステージで歌う。別にそれを悪いとは思わない。私だって女の子だもん。憧れが全くないわけじゃない。だけどさ、皆が皆、そんな風にキラキラなれるわけないじゃん。
 現に私がそうじゃん。せっかく夏休みだってのに、六畳の自室にこもってダラダラしてるだけ。予定も希望も未来もない。ついでに言うとお金もない。
 時折思う。きっと私たちの八割がたはロクな未来なんかない。高校を出て、大学に入って、社会人になっても、きっと死ぬまで切なくて惨めだ。輝きたいけどその方法がどうにもわからないし、その素質は生まれ持ってないといけないもので、キラキラ出来ずに皆死んでいく。
 今キラキラしている子たちだってそうだ。いつまでもキラキラしてることなんて不可能だよ。歳をとったら紙屑のように捨てられていくだろうし、輝き続けるためには大変な努力が必要だろう。それがいつまでも報われ続ける保証なんてどこにもない。
 そうか。
きっと皆NO FUTUTRE NO HOPEなんだ。
はは、すごい。
私は世界の真理に気付いてしまったのか…? やべぇよ…やべぇよ…
 そうだ。
これを歌おう。
きっと皆ロクでもなく死んでいくってこと、私だって、あの智美だって、まともな終わりなんて待ってないぞってことを、この惨めな思いを音楽に出来たら…。
 自室の六畳で私の脳が負の高速回転をしている時、電話が鳴った。


2.
 携帯の画面を見ると、電話をしてきた相手は茜だった。大方またどっか出かけようとか、その手の誘いだろう。私は応答ボタンを押した。
「へいへい」
「うーす。相変わらずヒマしてんの?」
「うるせー。人のこと言えないでしょ」
「まー、そーなんだけどさ」
 なんだ。心なしか茜の声色が妙にご機嫌だ。気持ち悪い。
「わざわざ電話してくんなんてどうしたん? なんか急ぎの用?」
「そうじゃないんだけどさ、アタシさ、ベース買ったぞい」
「は?」
「言ったじゃんかよ。楽器でもやってみようかってさ」
 そういや夏休みに入る前にンなこと言ってたような…。
「ま、そういうワケだからさ、今度教えてよ」
「私ベースなんて弾いた時ないっての。にしたって、何で突然ベースよ」
「ギターだと麻衣子とカブってつまんないじゃん」
「ンなくだらねぇ理由かよ…」
 音楽をナメてんのかと言いたくなったけど、ここで私の脳裏に素晴らしいアイディアが閃いた。茜がベースか…。あとはゆっこ師匠と誰かもう一人引っ張り込めれば…。いける。
「よっしゃ。茜さん」
「なんじゃ麻衣子さん」
「バンド、やろう」
「は?」
「バンド、やろうよ。んで学祭のライブに出よう!」
「あんた気でも狂ったのかよ。昨日買ってきたばっかよ? まだチューニングもロクに覚えてねーっつーのに」
「いいのいいの。こまけぇこたぁ。とりあえず決まりだかんね! 明日にでも茜ン家行くから、ちったぁ練習しときなさいよ!」
「ちょっと麻衣子ォ」
 言うが早いか私は電話を切り、電話帳から藤森裕子の番号をダイアルした。

 藤森裕子。私や茜と同学年で、軽音楽部の知人の一人で、通称ゆっこ師匠。私の代では唯一のドラマーである。よって各バンドに引っ張りだこ。掛け持ちは当たり前。しかし本人曰く「色々叩いた方が練習になンからねぇ」だそうな。勤勉な音楽への姿勢と、おとなしそうな見た目とは相反する激しいドラムプレイにより、皆から師匠と慕われている。
 
ワンコールで師匠が出た。
「はいはい。藤森ですが」
「こんちゃーす師匠。今大丈夫?」
「大丈夫だよ。つーかさ、その師匠呼ばわりは電話では止そうよ…。最近すっかりクラスの子にも広まってんだからさぁ」
 そうなのである。ゆっこを師匠と呼び始めたのは私なのだ。部内にはあっという間に広まり、ゆっこに用があってクラスまで出向いた際などにもそう呼び続けていたためか、部外にもあだ名は広まってしまったのである。
「で、何よ麻衣子。電話してくんなんて珍しいじゃん」
「いやさぁ、ゆっこに頼みたいことがあるんだ。学祭なんだけどさ、予定空いてる?」
「空いてないことはないよ。何よ叩けってこと?」
「そ。今年はバンドで出ようと思ってんだ。是非ゆっこにドラムお願いしたいんだけど、引き受けてくれる?」
「いいよ。掛け持ちでも構わないなら私は大丈夫」
 即答かよ。さすが師匠。話が早くて助かる。これでベースとドラムは確保。あともう一人は…姫を誘うか。ちーとばかし難しいかもだけど、姫を引き入れれば最強だ。
「曲は何やんの?」
「まだ決めてないんだ。そんなややこしそうなのは考えてない。急造バンドだし。決めたら速攻電話するよ」
「わかった。あとメンツは? 私と麻衣子と、後は誰?」
「うちのクラスの木村茜ってわかる?」
「わかるわかる。あの強そうな子」
「そう。あの強そうな。彼女がベース」
「へー。あの子楽器やってたんだ」
「最近買ったらしい」
「素人かよ」
「うん。でも人間的には間違いないから。それは私が保証する」
「そっか。うん、そういうのって大事だしね。テク云々だけじゃないし」
 私の言葉でゆっこも納得してくれたようだった。
「ほいじゃまぁトリオってことで」
「あー、あとは姫も誘ってみようかなぁって思ってる」
「姫ェ!? 難しーんじゃないかな」
「やっぱし? 今年も一人で出そうだしなぁ…」
「そーじゃなくてさ。姫は…あんたに対抗意識あっからさ。中々厳しいと思うよ」
 対抗意識なァ…。心当たりがさっぱりない。
「なんでそんなもん抱くのかねェ…。顔も歌も家柄も上等だろーに」
 私の言葉に師匠が苦笑する。