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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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Our Glorious Day ~Pippa Side~

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 やがて救急車が到着した。サラが移されている間、救命士さんの1人が
「付き添いをしていただけますか」
 ってピッパに聞いてきた。ピッパは思わず
「えっ、ピッパが!?」
 なんて言って、目をきょろきょろ動かした。でも現実、家にはサラ以外にピッパしか居なかったから、自動的にピッパが付き添わなきゃいけないよね…。そう思うと、ピッパはうなずいた。
「じ、じゃあ、付き添いする!」

 実はピッパ、救急車に乗るのは初めてだった。それに、密室みたいな車内の独特のにおいにサラへの心配と不安、焦りというメンタル悪条件が重なって、心だけじゃなく足まで震えた。いろんな意味でキツかったけど、
(サラの痛みと苦しみに比べたら、ピッパのなんか全然軽いじゃん。我慢しよう…!)
 自分にそう言い聞かせて、心身のキツさに耐えた。

 10分ぐらいして病院に着くと、お医者さんとか看護師さんとかが慌ただしく出産の準備をしてた。その間、助産師さんらしき人がピッパに声をかけてきた。
「シュルツ夫人のご家族の方ですか」
「あ、いや、違います…」
 とっさにピッパは否定したけど、その人はまた聞いてきた。
「お手数ですが、立ち会ってくれませんか」
(ええ〜!?ピッパ、出産の知識とかまるっきりゼロなのに〜)
 ピッパは心の中で絶叫して、目を丸くした。でも、ここまで来たんだから、もう逃げることはできない。っていうか、ここで逃げたら女に生まれた意味がないじゃん!そこで、大きくうなずいた。
「はい、します!」

 そしてサラのほうに行ったけど、彼女はすごい汗だくで何度もうめいていて、とても声をかけられなかった。こっちもパニクっちゃって、首動かして周りを見てばっかりだった。
(ねえ〜本当、ピッパどうすればいいの〜?)
 そんなピッパの心の叫びが聞こえたのかな、助産師さんが来て、
「あなたもサラの手を握って、温かい声をかけてあげて」
 と言ってきた。ピッパはそのとおりにした。ひたすら苦しんでるサラに、何度も何度も
「大丈夫、頑張って!」
 と言った。ただ、心のどこかで
(ティム、すぐにでも来て!)
 …とも何回も言ってたけどね。


 そして数時間後、サラは元気な男の赤ちゃんを産んだ!おっきな産声を聞いて、ピッパも声上げて泣いた。
「生まれた〜!うれしいよう〜〜!サラ、本当におめでとう〜!!」

 少したって、ティムが駆け足で入ってきた。ここからは「家族の時間」。だから、ピッパはちょっと離れた。
 ティムは涙目でサラに何回もキスして、何か話しかけてた。これほど感動的なラブシーンは見たことなかった。泣けた。
「ピッパ…ピッパ…ここに居て良かった…グスッ」
 そうつぶやいてると、ティムがこっちに来て
「ピッパ、立ち会ってくれたんだな。どうもありがとう」
 と声をかけて右手を差し出して、がっちり握手してくれた。ピッパはうん、うんとうなずいた。

 赤ちゃんの名前は「スティーブン」に決まったみたい。ピッパは幸せいっっぱいのシュルツファミリーを見ながら、心の中でつぶやいた。
(これから、家族3人の生活が始まるね。頑張ってね、ティム。頑張ってね、サラ。元気に育ってね、スティーブン)

 この日は、スティーブンと彼の周りの人みんなにとって「記念日」になる、そんな予感がした。