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⑧残念王子と闇のマル

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「残酷非道な、人殺しの腕に長けた姿を見せたくなくなるんです。」

「ん。」

空の同意に少しホッとしたのか、麻流は再び空の胸に頬を寄せた。

「でも、何をしても王子を守りたい。王子に仇なすものは、皆殺しにしてでも守りたい。」

はぁ、とひと息吐いた麻流は、自信なさげに小さく呟く。

「その狭間で集中できなくなってて…怖いんです。」

空は、麻流の体をぎゅっと抱きしめた。

「カレンを、甘く見すぎ。」

「…え?」

驚いた麻流が、体を起こす。

「カレンは、強いよ。」

言いながら、再び窓の外へ目を向けた。

「腕も立つし、おまえの全てを受け入れる器のでかさもある。」

そして、斜めに麻流を見下ろすと、額に口づける。

「おまえが『カレン』って呼んでやりゃ、あいつはそのへんの上忍よりも強くなる。」

麻流は、俯いて空の胸に額を当てた。

「本当に、思い出さなくていいんでしょうか?」

言いながら、空の服をぎゅっと握りしめる。

「少しだけ記憶を取り戻した時、王子はとても嬉しそうでした…。」

少しずつ、体が小刻みにふるえ始めた。

「王子が…抱こうとしたのは…過去の私です。」

「麻流…?」

「…ぅっ…!」

麻流が突然、頭をおさえて苦しみ始める。

「麻流!」

空が慌てて顔を覗きこんだ。

「これを飲め!」

口の中に丸薬を押し込みながら、空は麻流を抱きしめ背中をさする。

「小難しく考えるから、頭痛くなんだよ。」

そしてあやすように、背中をとんとんと優しくたたいた。

「ま、俺なら」

言いながら、空は聖華の顔を思い浮かべる。

「たとえ記憶なくされても、愛してるけどなー。」

その言葉に、麻流は虚ろな瞳で訊ねた。

「それは…なぜですか?」

だんだんと体から力が抜けていく麻流を、空はまるで赤ちゃんを寝かしつけるように優しく揺する。

「そりゃ、自分の人生に不可欠な存在だからだよ。」

薬が効いて、もう瞼が上がらなくなった麻流を、空は宝物のように大事そうに抱え上げた。

「カレンも、同じだと思うけどね。」

そのまま麻流をベッドへ寝かせると、丁寧に布団をかけ、その傍に腰をおろす。

そして頭を撫でながら、自嘲的に微笑んだ。

「そーいや、おまえにこんなふうにしてやったことなかったな。」

空は麻流の寝顔を眺めながら、幼い頃の麻流を思い出す。

「甘え下手だったなぁ、おまえ。」

久しぶりにゆっくりと娘と過ごせる時間に、空も心が休まった。
作品名:⑧残念王子と闇のマル 作家名:しずか