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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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Future Scope

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 旧約聖書に登場する「ノアの方舟」のように大きな船が、海を航海している映像が見えた。
「あら、大きな船」
 サラが言うと、その大船の窓の一つが次第にクローズアップで映り、それを通り抜けるように画面が動いた。まるで移動しながら船内を撮影するかのように。

 左へ曲がり、しばらく進んで右に曲がり、右側にある三つ目のドアの前で映像が一時停止したが、その直後にドアが自動的に開いた。

 何とその先には、かなり広い調理場があった。そこでは、数人の中年の女性が楽しそうに料理をしていた。
「…何だか陽気なキッチンね」
 レンズの奥の映像を見ながら、サラはつぶやいた。

 やがて、「大和撫子」という語句のよく似合う日本人女性が、何か歌っているように口を動かしながら、白玉をこねているのが見えた。こねる前の白玉の入ったボウルの横には、あんこの入ったボウルがある。また、その女性は銀色のスカート型の忍び装束を着ているが、その上になぜかかわいらしいエプロンを着ていた。
「この人…誰?」

 映像の視点は移動し、次に見えたのは、先ほどの女性とは別の魅力を感じさせる日本人女性だった。彼女もやはり歌っているように口を動かしながら、ゆで上がったスパゲッティに手作りと思われるミートソースをかけていた。また、彼女は茶色のスカート型の忍び装束をまとい、先ほどの女性と同じエプロンをしていた。
「この人も…あったことのない人だわ」
 2人続けて見知らぬ女性を見て、サラは少しずつ想像を膨らませた。

 それからまた視点が移動し、今度は少し若く見えるヨーロッパ系の女性が見えた。彼女は紫色に近いピンクのスカート型の忍び装束の上にかわいらしいエプロンをまとい、いかにもルンルンな感じで頭を左右に傾けながらバリスタマシンで抹茶ラテをいれていた。その映像を見て、サラはつぶやいた。
「この人、ピッパに似てる…」
 ピッパにそっくりなその女性は、出来上がった抹茶ラテになぜかマシュマロを乗っけた。

 そしてまた1人、ヨーロッパ系の女性が見えた。その女性は薄いピンクのスカート型の忍び装束に、3人とおそろいのエプロンをしており、抹茶ケーキの生地を楽しそうに泡立て器でかき混ぜていた。その女性を見たとき、サラははっとした。その女性が、自分にそっくりな見た目だからだ。
「えっ、これって私!?」
 彼女の疑問が晴れぬまま、調理風景のロングショットが映り、金文字筆記体で「HKB9の1」というロゴが現れた。
(HKB、9…、?1?)
 サラには、ますます訳が分からなくなった。
「これは、何かの暗号かしら……?」
 その直後、レンズの奥には「方舟」の外観が再び映った。
作品名:Future Scope 作家名:藍城 舞美