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武藤ゆたか
武藤ゆたか
novelistID. 63991
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モニのフクス

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題名 モニのフクス

  不気味なスカルが、ちりんちりんと唸るように、鳴いていた。
その音は「今日も殺した。明日も殺す」と唸っていた。
ぼくは、そのスカルの音が怖くてたまらない。血の匂いが充満するから。
いつまで続くのだろう。
「ツクヨ、おはよう」親が起こしにきた。今日も小さなリュックに
教科書を詰め込み、寝癖のままの髪を振り乱しながら部屋を出た。
朝の納豆をかきこみ急いで出掛ける。
道々の燃え盛る電気を流す電信柱を見ながら学校へ向かう。
小さなタンポポが道の脇に健気に咲いていた。
アスファルトに負けないかのように儚く。
 「よう、ツクヨ」クラスメイトのイザナが声をかけてきた。
「今日のおまえ、顔が暗いぞ。もっと元気に明るくいこうぜ。
なんかいいことあるしよ」
「うん、そうだな。あんがと」とぼくは言った。
「おまえら、今日はなんでもりあがってるんだ?」
後ろからもうひとりアマテがやってきた。
「うん、特に」
ぼくは戸惑いながら答えた。
学校にもうすぐつく。間に合いそうだ。遠くで車の急ブレーキ
の音が響く。吠えるように。

 私は今日、覚醒した。なにかが違う。服のせい?天気のせい?
違う、胸の膨らみとおしりがキュンとしまった気がするのだ。
だれかに触られた?そんなことはない。なんかくすぐったい。
ではなぜなんだろう。わからない。テレビをつけてみる。
『中東でまた自爆テロです。死亡者は多数。
多くの血が流れています』
と報道していた。
「やってられないわ」
わたしはうんざりしながら、朝食の納豆を食べた。おいしかった。
そうだ、菌活、菌活と思いながら、ヨーグルトを食べる。
鞄のなかに、教科書を突っ込みながら、
「いってきまーす!」と家族にいいながら、学校へ
むかう。今日もいいことないかなあ、イケメンが私に
告白してくるとかさ。そう思いながらくすっと笑った。
木々と風が気持ちいい。いい日になるといいな。
私は神さまにそうお願いしつつ、学校に向かった。
木々が葉を揺らす。コソコソと静かに。

 ゆっくりと飛行機雲が御巣鷹山の方に旋回していく。
ぼくも旋回してクラスに入った。今日の授業は国語だった。
難しくてよくわからない。クラスに気になる人がいるかって?
いるよ。でも背中が遠かった。遠くからその女の子を眺める
だけだった。いまは。教科書の片隅にパラパラ漫画を書き、
笑っていた。パラパラ、パラパラ、バラバラ、バラバラ。
クラスから外の校庭をぼんやりと眺めていた。
ただぼーっとした時間が流れていく。
 休み時間になった。
 「おまえさ、これ知らない?新製品だぜ」
イザナが僕にカタログを見せる。そこには3種類の携帯が
載っていた。
「これさ、新製品のスマートフォンて言うんだぜ。帰りに
見に行こう」アマテが言う。
オレはそれがなんだかわからなかった。新機種好きの
触手が伸びた。呪われた機械だとは知らずに。
「うん、行くわ」
ぼくも行くことにした。携帯会社のディスプレイには、
従来のガラゲーではなく、目新しい小型な光る板のような
ものが置かれてあった。
 それにそっと触れてみた。その瞬間、ビクッ、ピクッとする触感があった。
脳のシナプスがくっつく音だった。
「どうこれ?」
「うーん、親と相談だな」
「おれも頼んでみるわ」
ぼくたちはカタログをもらい、それぞれの家に帰っていった。

 わたしは退屈だった。高校生だというのに、
デートのひとつもしたことがない。クラスに気になる人が
いないではなかった。でもいつも後ろ姿。
「顔が暗いぞーっ。どうしたぁ?」
「わたしも元気ないように感じるけどどうしたの?」
ともだちが、休み時間に聞いてくる。
「うん、王子様は、いないかなって」
「無理無理、うちらには縁がないって」
「そうかなあ」
わたしは帰ることにした。帰りの道すがら、
携帯会社のノボリが目についた。
<新製品、発売!。スマートフォン登場!>
とのんきに、はためいていた。
「ねえ、寄ろうよ、あそこ新製品発売だって」
「うん。ま、いっか」とともだち数人と、店に入った。
そこには、黒く光る板状の物体が、鎮座していた。
「さわっていじってみようよ」
「う、うん」
気乗りはしなかったが、手に取ってみた。
 指先が、そっとその物体に近づく。いやな予感が胸をかすめる。
指の先端がスマートフォンに触れた。その瞬間、
店員が、ガシャンと水をこぼした。ガッシャーーーーン。
なんだろ?と思ったが、わたしはスマートフォンをいじった。
ピカッとディスプレイが光る。子宮がドクッと疼く。ドクッ。
「わたし、買うわ。親に言ってみる。」
友人が言う。
「わたしもーーーーそうする」
カタログを店員さんにもらい、家にむかった。

 母と父に、これどう思う?と思いきってカタログをみせてみた。
「ツクヨ、誕生日がそろそろだから、いいわ。買っても」
「ありがとーっ」
「大事に使うのよ」
「はーい」
 ぼくは、すぐ携帯ショップに向かい、スマートフォンを思い切って買った。
「なかなか、かっこいいな」ぼくは、いじくりながら、帰り道で思った。
でもどうやって使うのかはよくわからなかった。
新製品だもんな、と気にしていなかった。後に大きな災いが
くるかも知れなかったが、気にしなかった。

 私はカタログをおずおずと母と父にみせた。
「ど、どう思う?」
「ふーん、新製品ねえ。イザナはどうしても欲しいの?」
「うーん、直感かな。びくっときたというかー、勘だよ、かん」
「しょうがないわね、いいわ。誕生日はこれでいい?」
と両親は言う。
「あんがと」と私はお礼を言った。
うれしかった。その瞬間、
両親が見ていたテレビで危険な地震速報が流れた。
また日本らしい。
「あーこわ、コワコワ」そう言って携帯ショップに向かった。
「いらっしゃいませー新製品ですよー。」と店員さんが言っていた。
わたしはピンクゴールドのにした。なかなかいい。
「これが、スマートフォンかあ、ともだちにも勧めよっと」
と帰り道、トボトボと歩いて帰った。すると遠くで「ピカ」と
イナビカリが、地上に激しく落下していた。暗闇を引き裂いて。

 夜のテレビ番組を僕は観ていた。「黒人を警官が殺害しました。またです」
「デフレが止まりません、みんなが失業と貧困になったようです」
「日銀がまた、大量に円を刷ったようです。」こんな感じのニュースだった。
「あんまり、芳しくありませんねえ」ぼくは呟いた。そして眠りに
ついた。嫌な胸騒ぎがした。なにか、変だ。なにかはわからないけれど。
闇が覆う感じがする。

 ぼくは休日に渋谷に出かけた。代々木公園に行こうかと思ったけど、
なんとなく渋谷に出かけた。なんとなく気分で。
井の頭線を降りて蔦屋ビルを左に曲がり、ハンズとロフトに向かう。
どこの国にもない、日本のセンスのよい宝がありそうな場所だ。
ワクワクする。
 ハンズに入ろうとしたけど、ちょっと気が変わり道路を渡り右に曲がると
小さな脇道がありそこをずいずいと歩く。
 まるでなんでも殺せる重戦車のように。そこの電柱に
やたらシールと落書きがしてある。なんと書いてあるのか?
いまのぼくにはわからなかった。この落書き、ボックスにも
作品名:モニのフクス 作家名:武藤ゆたか