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俺はキス魔のキッシンジャーですが、何か?【第二章・第一話】

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饅頭人に食べられた楡浬を連れて帰る大悟。饅頭人になれば人間を食うので、仕方ないという大悟の判断である。今は大悟家の前にいる。
《まる、饅頭人だった時、人間が饅頭に見えて食べたくなった。だんまり。》
「あたいも男子がすべてショタ饅頭に感じられたです。性喰の字。」
「和菓子屋が商品開発すれば、ショタ女子には売れ筋になりそうだな。って、そういう問題じゃねえ。その話からすると、饅頭人が人間を食べるメカニズムは本能の食欲に働きかけるものらしいな。」
《大悟、楡浬饅頭に食べられる危険性高い。だんまり。》
「そうそう。家に置くことはよくない。鬼険の字。」
「心配してくれてありがとう。だからここまでは楡浬には悪いが、ロープで縛って、猿轡をしている。」
「事情はママから聞いたよ。ダメよ。お兄ちゃん。愛人二号は元々要警戒人物だったのに、饅頭人になっちゃったらもうどうしようもないよ。ダルマたちが言うようにいつ食べられてもおかしくない状況になってるんだよ。これって、逆スイーツパラダイス、愛人二号に食べられ放題だよ。お兄ちゃんがそんなにドMだったとは知らなかったよ。どうせならモモに食べられ放題券をくれればよかったのに。」
「そんな食券、街のチケット屋に持ち込んでも値段がつかないぞ。」
 桃羅が玄関に出てきて両腕を拡げて仁王立ちして、家への侵入を『キープアウト』している。
「お兄ちゃん。野獣、いや野饅頭を野に放つなんて、危険過ぎるよ。命をドブに捨てるようなものだよ。どうせ捨てるなら、男子でいちばん大切なモノをモモに捨てればいいのに。拾う女神はここにいるんだから。ぽっ。」
 押さえた頬が赤味を帯びている桃羅。
「もごもごもごもご!」
 楡浬饅頭はからだを左右に動かして猿轡越しに何かを喚いている。クレーム申立者に共通する症状である。大悟は眉をひそめながら猿轡を解いた。
「見た目では胸以外は変わりがないなあ。」
「あ~苦しかった。そうよ。このアタシがたかが饅頭人に食べられたくらいでどうかなったりしないわ。」
「じゃあその胸はいったいどう説明つけるんだ。」
 大悟はわずかに目尻を下げて、楡浬のBカップと思しき部分をチラ見した。
「い、イヤらしいわね。ちょっと大きくなったからって、すぐにこれだからね。キッシンジャーだけでなく、オパ魔だったのね。」
「なんだ、その大統領的な尊大表現は。」
「アタシの胸なんだから尊王攘夷は当然よ。これまでアタシのからだは、大悟の許嫁という冬の時代に、水面下で開花すべくひきこもってたのよ。でも今矢が解き放たれたんだわ。これからは巡航速度で成長していくから安心しなさいよ。日本経済を遥か彼方に置いて、大きくなって行くんだからねっ。」
「その勢いはまさに楡浬だな。なあ、みんな。これなら楡浬は大丈夫だろう。今まで通り家に置いていくぞ。」
 こうして桃羅たちの反対を押し切って、楡浬饅頭を家に迎え入れた大悟。たしかに何事もなかった。

 数日後の放課後、大悟と楡浬の携帯が鳴った。
『ぷにゅぷにゅプシュー、ヒンニュ。』
「この忌々しい着信音がアタシの心の中でに響くことは永遠に葬りさられたわ。」
 ご満悦な表情の楡浬と大悟は、饅頭人出現現場の女子校に到着した。今日は騙流と衣好花はバイトでいない。
 キッシンジャーでひときわ女子高生たちを恐怖に陥れた大悟。世間的には『饅頭人よりもキッシンジャーの方がコワい』という噂が流布している。事件の被害人数からすると、たったひとりの饅頭人を倒すために、不特定多数の女子がキッシンジャーしまくられるのである。 饅頭人そのものよりもキッシンジャーの方が迷惑なのである。従って、本来正義のヒーローである大悟は、忌嫌われる存在であった。巨大怪獣とバトルして高層ビルを破壊しまくるウルトラマンなどは論外の大迷惑ヒーローである。そういうヒーローの現実にスポットを当てたのが、ゴジラシリーズである。ゴジラは悪の怪獣を倒す点はヒーローであるが、それ以外の面では人類にとって邪魔者であり、相反する存在意義を描くことで、物事には必ず裏表があることを主張しているのである。
 女子高生から罵声を浴びせられながら、ようやくターゲットの饅頭人を発見した。
「よし。仕上げだ。やるぞ、おんぶズマン。」
「わかってるわよ。よいしょっと。」
 湯たんぽを背負った楡浬が大悟に乗っかる。
「少し重くなったな。これは間違いないな。」
「ちょっと変なこと考えないでよね。何度やっても恥ずかしいポーズなんだからねっ。」
「余計なことを言うなよ。饅頭人を倒すことに集中しようとする意識がぶれてしまうだろ。すぐにスイッチオンだ。」
「うん。・・・。これだと押し出す力がいらないわ。胸があるって、こういうことなのね。すごいわ。」
 両手を頬に当てて感動している楡浬。人生で初めてのプチ豊乳体験に恍惚としている。
「・・・。おい。スイッチが入らないぞ。背中には大きなプレッシャーがあって、き、気持ちいいけどな。」
 大悟も方もいつもと違う感触に興奮気味であった。
「ちょっと、よそ見しちゃだめよ。バトルの最中なんだからねっ。」
「わかってるって。・・・しかし、スイッチがどうして入らないんだ。」
「わからないわよ。いつもの通りにやってるだけなんだけど。じゃあ、こうかな。」
 楡浬は弾力のあるゴムまりを強く大悟の背中に押し付ける。
「ひゃああああ。止めろ。それ以上プレッシャーを受けると、オレの前頭葉が」
「なになに?戦闘以外のことを考えてるんじゃないの。」
「そ、そうじゃない。考えてるんじゃない。不本意な感情が大脳に流れ込んできているだけなんだ。」
「言ってることがよくわかないわ。スイッチはまだ入らないの?」
「そうなんだ。どうしてだろう。背中にはいつもよりも強い圧力を感じるのに。」
「まだ押しが足りないのかしら。こう、こう、こう?」
 楡浬は両腕を大悟の肩に立てて、駄々っ子のようにからだと胸を揺する。
「ちょっとそれ以上はヤバい!」
「なになに。もっとやれってこと?じゃあ、もっと動かすわよ。こんなに胸が揺れるなんて、アタシ、スゴイわ。」
「やめろ~!」
 大悟はついに楡浬を下ろしてしまった。その隙に饅頭人はいずこかへ消え去っていた。
 
 その日から数回、饅頭人事件現場に行くもおんぶズマンスイッチが入ることはなかった。
 授業が終わり、帰宅した大悟は楡浬と話をしている。
「楡浬。胸が大きくなってからどこかおかしくないか。」
「べ、別に何もないわよ。」
 そう言いながら楡浬は手に持っていた何かを後ろに隠した。
「おい。今おかしな動きをしたな。やっぱり前とは違うぞ。これは母さんに相談しないといけないかもな。」
『ぷにゅぷにゅプシュー、ヒンニュ。』
「母さんから携帯だ。このタイミングで電話してくるとは、どこかでオレを監視でもしているのか。」
『ママは監視なんてしてないよ。ただのストーカーだよ~。』
「余計悪いわ。親子でも犯罪は成立するんだぞ。」
『楡浬饅頭ちゃんはその饅頭人が先に人を食べてるからしばらくは大丈夫だよ。』
「そうか。それはよかった。」