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昔飼っていた猫

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昔になる。もう10年以上前だ。そのころ私はガキだったため、愚かなことをしてしまった。それに気づいたのはつい最近で、昔のことがこれほど影響を及ぼすのだ、と感じた。

 それは、猫の話だ。

 昔飼っていた猫の名前はチョビで、それはそれは大変に可愛がっていた。ことあるごとにチョビに触り、抱き上げ、弟と奪い合いになり、チョビが逃げ、それを追い、弟もついてきたので制止しようとしたらそれができず、喧嘩になって、そのときチョビは一安心しただろう。
 冬の夜、妙に耳元でニャーニャーうるさいと思ったら、チョビが「布団に入れろ」とでも言うように催促していたので、すぐに掛け布団を持ち上げ、暖かい空間に招いたのである。そこから両方眠った。しかし、突然カンカンカンと、エサのための金属製の皿が鳴ったようで、私自身は気づかなかったが、ズボッと布団から高速移動し、寝ぼけながら「待て」などと言って、あるいは夢だったのかもしれないが、チョビはその時点でもうエサをもしゃもしゃ食べていたのだろう。そのときチョビは、快適だった、とだけ思っていただろう。
 ある日、ベランダを見たら、チョビがいた。その場所は手すりの上だった。断面が横に長い楕円形だったため、猫にとっては簡単に歩ける。しかし私は気が気でなく、落ちるんじゃないかと思い、親に通報した。親は即座に駆け付け、チョビを助ける。と思いきや、ヘラヘラ笑いながら写真を撮り始めていた。そのときチョビは、何を騒いでいるんだ、と呆れただろう。その証拠に、顔をそむけて、その場に伏せていた。
 
 とにかく大好きだった。大好きで仕方なかった。チョビがどう思おうと、私の気持ちは変わらない、永遠に変わらないと思っていた。だから、チョビが死んでしまうことを想像したとき、ガキのくせに、涙が出た。

 ある日、いつものようにチョビと戯れていた。あれは確か冬で、ファンヒーターの前でチョビの腹を見ようと、ひっかかれないよう細心の注意を払い、そして見ることに成功した。
 しばらく腹を撫でていた。チョビはあまり嬉しくはなかっただろう。それまでファンヒーターの前で暖まっていたのだから。
 それでも撫で続けていた。
 そのとき、腹の中央に黒い点を見つけた。そのときは、特に気にしなかっただろうか。よくは覚えていない。

 だが、日を追うごとにその黒い点は目立ち始めた。一体何なのか、病院に連れていくことにした。
 まあ、できものならばさっさと取り除いて、きれいにすればいい、そんな感じだっただろう。そのときは。

 チョビが家に帰って来た時、親は言った。

 「癌やった」
作品名:昔飼っていた猫 作家名:島尾