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三次 虎雄
三次 虎雄
novelistID. 63443
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冬に散ったある青年の花

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 2人は、戻ってから個々に、被害者江花 敏行の周辺の情報収集をしていた。車で警視庁へ戻る途中お互いに疑問に感じることは、毎回会議前に情報収集後必ず解決するようにしていた。
 まず一通り2人が、情報収集を終えた9時10分頃ともにうなずき合って「今から始めましょうか。」と、江草刑事は言った。作部刑事は、学務課で学生係の弘前氏からどうやら被害者江花氏は、大学3回の秋10月中頃に両親を交通事故でなくしてから、半年近く大学を休み1年留年していたことが分かった。その確かにまだ大学生だった彼には、相当苦痛だったことが伺えるその空白期間の形跡の調査を明日から交流関係から取り掛かりたいと作部刑事は、言った。
一方江草刑事は、ブテイック屋で彼の交流関係を聞いてみたが、店のオーナー佐枝 まど香さんにもう少し彼のことを聞き込みに行きたいと作部刑事に言った。
 翌日から、捜査一課は11名中5人は、まだ新米同然で同行捜査を組み、現場周辺と鑑識班と現場からの追跡を任されていた。一方、江草刑事たちベテラン陣は、単独行動で、走り回っていた。江草刑事は、2日後にブテイック屋オーナーと会い、被害者江花氏の生前のことで聞き込みを行っていた。すると、彼は高校卒業後から、一流のデザイナーを目差していて入店後からも勤務は皆勤で優秀な店員だったらしい。
また、他の店員ともトラブルは何一つなかったと彼女は、言った。さらに、彼のプライべートは、他の店員同様公私混同には日ごろから厳しい店なのでほとんど知らないらしいし、とてもこの事件には驚いていると彼女は言った。
 その日の午後警視庁へ戻ると、早速江草刑事は、彼のこのデザイン業界の活動がどうも気になり鑑識班と新米の木崎刑事に彼の部屋からの遺留品を見せてもらえるように指示した。すると、スケジュール帳には、3年前からやはり、沢山デザイン業界の企業の名前やファッションショーの日程が記入してあった。
 そのスケジュール帳には、企業全てで24社の名前と連絡先が、ファッションショーに関しては32個記入してあった。全て単独で聞きこむのは、かなり労力を要するので新米の木崎刑事はじめもう一人安富刑事に任せた。
 その日の捜査一課の時計の針が丁度5時を指す頃、作部刑事が、戻ってきた。ここ3日間、被害者江花氏の出身校布引高校の担任や大学時代の友人であった2人に会ってきたと話した。その友人のうち潮見佳次から、彼の両親が亡くなった頃に突然夕方ごろ喫茶店で頻繁に死にたいと彼が言って一週間ほど行方不明になったことを聞いたと教えてくれた。 
もう一人の友人からは、高校時代の同級生のある女の子と親しかった時があり、何回か彼のアパートにもいてたと聞いたらしい。その女性の件は、同僚の女刑事山縣氏に任せたと作部刑事は、近況を教えてくれ江草刑事も最近の報告をした。
 翌日から一週間が経ち、捜査一課は、捜査員11名で第二回捜査会議を開いた。新米の木崎刑事と安富刑事からは、スケジュール帳に記入してあったファッション業界の24社のうち11社を訪問したが、彼のデザイン企画の提出先らしく他も同様に想定できるがもっと絞ってみるとの報告があった。女刑事山縣からは、被害者江花氏の親しかった高校の同級生は、塩見みどりと特定できたが、彼女は2年前ほどに東京の秋葉原のビルから飛び降り自殺したとの驚きの報告があった。遺書関連は、当時の所轄の担当から聞いたが、ある交際男性とのもつれだったが、江花氏ではなく彼女の勤務先の出版企業の方ということが分かった。しばらく、捜査員11名含めなんか変な異様な雰囲気の中沈黙が続いた。
 彼と親しく有力な情報が得られそうな交際女性が自殺というケースは過去の捜査にもなく捜査一課全員が次へ進む前に一つ一つ丁寧に処理してくよう認識しなおし捜査会議は終了した。江草刑事は、捜査会議終了後廊下で、山縣刑事を呼び止め彼女の今後の捜査は自分が交代すると伝えた。彼女には自殺関連の件は外した方がいいとの上官からの指示であった。山縣刑事は、また以前の目撃情報や現場関連の担当へ戻るようになった。よく探り当ててくれたので、江草刑事は、「お疲れさん。次は、私がやるよ。」と声を掛けた。
 早速、江草刑事は、車で交際相手だった塩見氏の実家のある埼玉県に向かった。すると、実家にはたった一人の祖父がいるだけで、彼女の両親は、昔から病弱で5、7年前にそれぞれ亡くなったと聞いた。彼と同じ出身校布引高校にも寄って聞き込みを行ったが彼女と親しかった人も少なく大人しい生徒だったらしい。また、彼女の高校卒業後の進路は、都内の三季女子大学だったらしく、江草刑事は明日伺おうと警視庁へ向かった。
 
 そうこうするうちに、捜査一課11名が有力な手掛かりをなかな得られず事件発生から1カ月が経とうとしていた。


 江草刑事は、交際相手の塩見みどりと被害者は、彼女の大学時代後半2年間付き合っていたことが分かり、彼女とどういういきさつで別れ、社会人時代には、三角関係があったのかつかみきれていなかった。交際相手の塩見みどりを自殺に追いやったとされる出版会社の戸波武と会って話をしたが、彼がいわく彼女は大学卒業までつきあっていた人がいたらしく、喧嘩して別れたらしく詳しくは知らないということだった。おそらくその元カレが、江花氏と推定できる。
そして、その出版会社の戸波氏と塩見氏の交際が、順調な最中にこの自殺事件が起こり戸波氏は驚いたと聞いた。遺書には、(今の彼が、何度も私のことをかばってくれない。苦しいので、死にます。さようなら。)と書いてあったそうだった。
 江草刑事は、この戸波氏はごく普通のまじめな一般社員で、その後の交際関係からも無難な情報筋からだが全く問題なく、たまたまこの江花氏との交際関係が盲点だったと勘付いた。江草刑事の読みどおり自殺事件の担当だった所轄の捜査資料にも挙がっていなかった。 
 そして、自殺現場の秋葉原近辺の高層ビルの屋上へ行ってみた。当時の捜査資料の死亡推定時刻からも夜中11時30分頃から2時の間に飛び降りたらしく、自殺した塩見氏には、相当なことが2年前にあったと考えられると江草刑事はにらんだ。
 翌日、江草氏は、塩見氏の勤務先出版会社に連絡して勤務状況の確認をとったが自殺当日と前日も通常通り出勤していたと聞いて、かなり複雑な心境になった。自殺当日勤務終了後5時30分退出してから1時間かかる自殺現場としても死亡推定時間まで5、6時間あるがもうすぐにもこんな高いビルから死ぬことが考えられなかった。自殺より他殺の線はないかと江草刑事は、かなりハードルは高いが江花氏と塩見氏の交際関係の軸からしっかりこの事件の盲点つぶしに取り掛かろうと決心した。