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カクテルの紡ぐ恋歌(うた)Ⅷ

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「そういうの、おかしいと思わない? たまたま一緒にいたからって、それだけで幕に栄転なんて! だいたい、吉谷さんは子供がいるから残業できないのに、そういう人がどうして幕勤務になるわけ? 話を受ける方も受ける方だよね。はっきり言って、厚かましいもいいところじゃない! 地道にやってる人は他にもたくさんいるのに!」
「でも、吉谷さんは……」
「だからこの間、日垣1佐に言ったの。語学では吉谷さんに負けない自信あるし、私のほうが使い易いはずだから、空幕のポストに推薦して欲しいって。渉外班にはもう三年近くいるし、そろそろステップアップしたいのに、うちの班長にそういうこと話しても、全然埒が明かないから」
「じゃあ、あの時、話してたのは……」
 エレベーターホールで八嶋が第1部長に訴えていたのは、己の人事に関する話だったのか。日垣の前で泣いているかのように見えた時、当の八嶋の心の中は、日垣貴仁ではなく、希望の配置先のことで一杯だったのか。彼の胸に頭を寄せていた八嶋の姿が、再び鮮明に思い浮かぶ。彼の制服に触れる黒い髪。全身を痺れさせるような不快感――。

「そんな、そんなことで……!」
「そんなこととは何よ!」
 声を震わせる美紗に、八嶋は激しく言い返した。
「運がいいだけで直轄チームに入ったよそ者に、そういう言い方される筋合いはないと思うんだけど? 私は、学部卒で現地経験もないっていう理由で、地域担当部には配置されなかった。三カ月の短期留学じゃ『留学』とはみなしてもらえないし、外資での勤務経験も考慮されなくて。院卒の人とかに大きな顔されて、今のところでずっとやってきたんだから。いつかは専門官に繋がるポストに就けるって言われたまま、ずっと……」
「でも、渉外のお仕事も、とても専門的じゃないですか」
「技能的にはね。でも、いくら会議通訳なんか出来たって、主役は中身を語れる人のほうでしょ? 専門官の地位とは雲泥の差なんだよね。担当者レベルの会議なら、通訳はまず要らないし。海外機関との仕事にしたって、調整事務をやってる私自身が海外研修に出られるわけじゃないし。そういうプログラムに参加するのは、専門官かその卵たちばっかり。渉外班にいても全然いいことないんだから」
「でも、だからって、あんなことを……!」