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ツイスミ不動産 物件 X

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 2週間が経過。
 その間に不動産屋二人は知る、文筆業界には504号室・妄想伝説があると。さらに調査を進めると、全室が作家向けのみの、504号室、築30年のアパートを売りたがってる人がいると。場所は町外れの高台。風光明媚で言うことなしだ。早速ツイスミ不動産で取り扱うこととした。

 本日は老夫婦を引率しての現地確認。
「超お得物件、なんとお望みの504号室が10室もあります。全室使って頂いても善し、余った部屋を貸して頂いてもOK!」
 紺王子の紹介に力が入る。それにさりげなく笠鳥課長が「毎日妄想だらけで…、文学賞まちがいなしですわ、オホホ」とおっ被せる。

 だが夫人は「お値段次第ね」と冷たく反応。これを受けカサリンはクワガタに目配せする。紺王子は一呼吸し、高らかに宣言するのだった。
「作家様だけへの特別価格、たったの504万円で〜す!」

 されど腐っても物書き屋、「その安さの理由は?」と甘い誘いの背後にある真実をえぐり出そうとする。
 事情があることを隠せば法律違反。笠鳥は責任者として襟を正し、告げる。ただそれは小声だった。
「実は訳ありでして、ここに住まわれた作家さんは大概妄想の果てに、推理小説の実証をと、ご自身が犯人になられてしまいまして…、今は不幸にも、もう一方の終の棲家、監獄504号室で暮らされてるみたいですよ」

 さてさて、みな様なら――買いますか?