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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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彼らが浴衣に着替えたら

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前編


 今日は、トロント市内の某スタジオで、日本庭園のセットを用いた雑誌撮影の日。「LOVE BRAVE」の4人が、生まれて初めて浴衣を着た。ヴォーカルのフィルは灰色っぽい帯を締めた、黒地にえんじ色の幾何柄の浴衣、ギターのヒューゴはロックテイストの強い金色系の帯に黒のヒョウ柄の浴衣、ベースのジミーは黄色っぽい茶色の帯と、黒地に白く太い線の破れ格子模様といったちょいとおしゃれな浴衣、そしてギターのスティーブンは、濃い紺色の帯と、白地にところどころ細いラインの入った紺色の長方形の市松模様の浴衣姿である。フィルはうれしさ全開でコメントした。
「何だか魔法にかかったみたいだ」


 まずは、メンバー一人一人のソロショットから。フィルはうちわを持って眼差しを遠くに向けているショットや、人さし指と中指を唇に当てて流し目を見せている色っぽいショットなどを撮った。ヒューゴは、前を向いて襟を直しているようなしぐさのショットや、「壁ドン」の体勢で、顔だけをカメラに向けたショットなどを撮った。
 ジミーは、横向きになって腕組みをして、顔をカメラに向けて「どや顔スマイル」を見せるショットや、信玄袋を片手に直立するといったシンプルなポーズのショットを撮った。スティーブンは、上半身を右に傾けて笑顔を見せたショットや、視聴者に向かって
「一緒においでよ!」
 と言っているように手を差し出すポーズをするショットなどを撮った。

 カメラのケンゾウ・ホシノさんは撮影時、被写体一人一人に
「おっ、色っぽい!」
 とか、
「ワオ、かっこいいねえ!」
 さらには、
「いやあ、爽やかだ〜」
 などと言葉をかけた。カメラさんに褒められまくり、みんな意気込んで被写体を務めている。カメラが回っていないときは、どのメンバーも頬が緩みっぱなしである。これは、和装の成せる業なのだろうか。


 続いて、集団ショットの撮影である。縁側のセットの前で、向かって左からジミー、フィル、ヒューゴ、スティーブンという並び順で、真顔で思い思いの立ちポーズを決めて撮影した。その次に、ホシノさんの指示で、ジミーがフィルの肩に自分の前腕を乗せて顔を寄せ、スティーブンがヒューゴの腕に寄り掛かるといった変わったポージングのショットを撮った。ホシノさんは思わず、
「いや、これ、すっごくいいですよ!」
 と大声で褒めたそうな。

 その次に、ちょっとしたお楽しみがあった。何と、仮面ライダー1号、仮面ライダー2号、ライダーマン、仮面ライダーマッスルのお面を用いたショットを撮るというものだった。この企画に、メンバー全員が快諾した。フィルはライダー1号の、スティーブンはライダー2号の、ヒューゴはライダーマンの、ジミーはマッスルのお面を実際にかぶったり、顔に当てたりした。顔がヒーローで、服装が浴衣という何ともシュールな姿のショットの連続に、メンバー本人たちはおろか、スタッフも笑いが止まらなかったのだとか。ちなみに、ホシノさんはレディ9のお面をかぶることになり、他のスタッフに撮影してもらったとのことである。

 フィルはお面を頭の後ろに着けて「二面男」をやり、スティーブンはお面を顔の真横に持ってきて「ダブルヘッド」をやり、ヒューゴは目の下の位置にまでお面を持ってきて「四ツ目男」をやり、ジミーはお面に付いたゴムひもを帯に挟んで「お腰に着けたお面」とでも言おうか、ちょっと意味不明なポーズをした。ホシノさんは、存分にカメラの腕を振るった。「LOVE BRAVE」は、
「おまえら、いったい何歳だ!」
 と突っ込まれそうなほどにはしゃぎまくっていた。