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HAPPY BLUE SKY

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少佐の思惑‥ハズレ2



少佐はデスクの上に両肘をついて私を見た。上から下まで品定めするように私の身体を見ていた。何なんだろう?少佐は一体‥私に何を言うつもりなんだろう。
「訓練校から提出された書類に書いてた事‥ガセじゃないのか?」

少佐の質問に私は答えることができなかった。詐称したのではない‥書類に書かなかっただけだ。書けば‥また日本に居た時のように「自分」を押し殺さなければならない。また自分が苦しんでしまう事がわかっていた。それがイヤで書かなかったのだ。

私が何も返事をしないの見て、少佐はタバコに手を伸ばした。そしてタバコを1本取り出し火を点けた。
「何で答えない‥言いたくないのか?言えば【経歴詐称】で訓練校をクビになるとでも思ってるのか?カッジュ訓練生」その少佐の言葉に部員全員が私を見た。
「カッジュ訓練生‥どういう事なんだ?」
アーノルド指導教育係が私の肩を揺すった。私は両手の拳をただ握り締めるばかりだった。

その時だった‥少佐が立ち上がって私のそばに来た。上官の質問に答えられないんだ。もう私は明日から部室に来ることはできないと思った。少佐の腕が上がった‥私は殴られると思った。【命令は絶対服従】のルールなのに!
「どうした?カッジュ訓練生」少佐は私の肩を軽く叩いた。

私は部室のソファで寝かされていた。目を開けると、デスクワーカのトムさんがいた。私の顔を心配そうに覗き込んでいた‥
「カッジュ訓練生‥大丈夫?」
「‥私どうしたんですか?」その声に部員達が笑い声をあげた。
私のそばに、ツィッター主査・ディック主査がやってきた。
「おまえ‥ホント何も覚えてないのか?」
「少佐が何の質問したかは覚えているか?」
「はい‥少佐に質問されたところまで記憶があるのですが」

部員達の話によると、少佐が私の横に来て肩を叩いた。その時の私の顔は青ざめていたそうだ。部員達も訓練生が殴られると思っていた。私もそう思っていた。私のしたことは【命令服従違反】に値するものだったから。少佐は私の反応がないので、私の顔を覗き込んだそうだ。私は極度の緊張により失神してしまったそうだ。グラついた体を少佐は片腕で私を抱き止め‥ソファに私を運んでくれたそうだ。

よりによって‥少佐にソファに運ばれてしまった私だ。あぁ‥もうこれで決定だ。私は明日からこの部室に来ることはできない。【実習】も単位ももらえずに終了だ‥訓練校を卒業できないかもしれない。話を聞いて‥両手で顔を覆った私に主査達は言った。
「結構‥心配してたぜ。あの人」
「君の身体を片腕受け止めた時にさ。顔引きつっていたぜ‥少佐」
またその声に部員達が口々に言った。
「少佐にしては慌ててたぜ。俺達が失神しても驚かない人が」
「俺達が失神したら【たるんでる】って激の一つも飛ぶんだけどな。君には【しっかりしろ!カッジュ】って言ってたぞ」

私は顔から両手を離して部員達に聞いた。
「それから‥先はどうなったんでしょうか?」恐る恐る聞いた。
私のこの問いに‥一瞬の間があった。やっぱり‥私はもう【実習中止】なんだ。だから部員達の答えが返ってこないのだと思った。
「あのな‥カッジュ訓練生」ディック主査が私の肩に手を置いた時だった。
奥の小会議室のドアが開いた。ドアが開いたと同時に少佐の声がした。
「気がついたか!カッジュ訓練生‥歩けるなら部屋に入ってこい」

私はきっと今から実習中止を言い渡されるのだ。小会議室に行きたくなかったが、行かないとまた【命令服従違反】になる。私は気力を振り絞って立ち上がった。
「失礼します!カッジュ訓練生入ります」敬礼して入室した。
作品名:HAPPY BLUE SKY 作家名:楓 美風