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[王子目線]残念王子

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今朝の年配の女官が、マルが選んでマネキンに着せた衣装を確認しながら豪快に笑う。

「しかも、このお面!」

(しまった…つけっぱなしにしてた…。)

「まぁ、これだけのことをいつもしてくれているんですから、ドレスの1枚や10枚や100枚、王子から贈られても誰も文句は言いませんよ。」

女官は僕に衣装を着せながら、肩を思いきり叩いてきた。

(痛いって!)

「密かに頼まれてたもう一枚のドレス、あれはあの子のものでしょ?」

耳元で囁かれ、僕は肩を撫でながらチラリと女官を見下ろした。

(なんだか、ものすごく恥ずかしい…。)

「そういえば。」

僕は女官に向き直る。

「僕は抱きしめたら3サイズがわかるんだけど、マルが『忍だから残念』って言ったんだ。どういう意味かわかる?」

僕の質問に、女官は少し考える素振りをした。

「想像ですけど…マルの仕事はいつ危険なことに体を張らないといけないかわからないでしょうから、服の下に防護服でも着てるのかもしれませんね。それで正確な3サイズがわからないから残念と言ったのかも…。」

(確かに、抱いたときに固かったかもしれない。胸の柔らかさもなかったかも。)

なぜかマルを抱きしめた時のことを思い出すと、頬が熱くなった。

そんな僕を見て、意味深に笑いながら女官は僕の耳に華やかなピアスをつける。

「で、その本人は今どこに?」

「おつかいに出てくれてるんだ。」

僕が自分で指輪をつけながら言うと、女官が背中を思いきり叩いてきた。

「げほっ。」

「まさか王子、あのドレスを届けさせてるんじゃないでしょうね…。」

ギロリと睨まれ、僕は背筋に冷たい汗が伝う。

(そうだ。小さい頃から怒ると、すごい怖いんだった!)

幼い頃、庭で禁止されていた草スキーをしてズボンのお尻に穴を開けた時、めっちゃ怒られたんだっけ。

僕はその頃のことを思い出して、思わずふっと笑ってしまった。

その瞬間、女官は僕の首根っこを掴まえて、部屋の隅へ引きずっていく。

「笑い事じゃないですよ、王子!」

「はい、ごめんなさい。」

僕が食いぎみに謝ると、女官はふんっと大きな鼻息を立てて、僕を解放する。

「なんだって、よその女へのプレゼントを、あの子に届けさせるんですか!デリカシーがないにも程がある!!」

(?)

意味がわからず、僕は首をかしげた。

すると、女官はかなりイラついたのか、乱暴に僕の身だしなみを整えながら睨み上げてくる。

(怖っ!)

「私が言うことじゃないんでね、言いませんが。ひとつヒントをあげます。」

女官はマントをつけてくれながら、低い声で僕に囁いた。

「あの子の『任務』は『王子の護衛だけ』です。」

(…。)

僕は何度も、女官の言葉を反芻してみた。

その時に甦ったのは、爺やの言葉。

『マルの方から専属契約の申し入れが…。』

(…!)

僕は、女官の顔を見つめる。

「いや、まさか…。」

女官は腰に手を当ててふんっと大きな鼻息をつくと、怖い顔で僕を一瞥した。

「…舞踏会までに帰ってくれば、私の勘違いなので、土下座して謝りますよ。」

「え?」

女官は僕の頬を両手で挟むと、思いきり左右に引き伸ばした。

「ぅいたたたたっ。」

「あなたはこの美しーい顔で、優しくて親しみやすい性格なので、頭が悪くても…いや逆に頭が悪いからこそ、女性は誰でも母性本能をくすぐられて心を奪われてしまうんですよ!」

女官は頬から手を離すと、僕の髪の毛を軽く直した。

「あの子、今夜は帰ってこないと思いますよ。」

(…えっ。)

呆然とする僕の頭に、女官は冠を乗せる。

「…ほんとに、憎たらしいほどイケメンなんだから…!」

そう言い残して、そのまま他の女官たちと一緒に部屋を出て行く。

誰もいなくなった広い自室は、いつになく心細く感じた。

「マル。」

小さい声でも、呼ぶといつもならすぐに現れる。

「マル!」

声を張り上げてみる。

でも、物音ひとつせず、誰も現れない。

僕は窓を開けて、バルコニーに出た。

広い中庭の向こうは高い城壁で囲まれ、その向こうにあるであろう果樹園などは全く見えない。

「マル!!」

中庭に向かって、大声で叫ぶ。

でも、マルはどこにもいない。

僕の心は、戸惑いと後悔でいっぱいだった。
作品名:[王子目線]残念王子 作家名:しずか