小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

盗人の掟

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 

子分達:「いけねぇ親分、俺たちゃー、まだ、何もやっちゃいねぇ、例え、共謀罪で捕えられたとしても、罪は重くはねぇはずだ、そうすりゃまた集まって、皆でお勤めが出来るってもんでさぁ」
子分達:「しかし、こいつをやりゃあ、もうおしめぇだ」
子分達:「此処は、ぐっと堪えておくんなせぇ、ねえ親分」と、可愛い子分達に、すがるような目で、訴えられると、観念したの
か、ぐっと目を閉じ胡坐になり、取り方が拍子抜けするほどに、あっさりと捕えられた。
   数日後、ある軍鶏鍋屋の二階奥座敷で、鬼の平蔵と腕利きの密偵が、軍鶏鍋をつつきながら、何やら話し込んでいた。
鬼平:「此の度の一件、誠にご苦労、いやご苦労であった」
鬼平:「此の度は、双方ともに血の一滴も流さず、あの大物以下残らず、捕縛できた事は、まさに慶事、そちの手柄じゃ、」
密偵:「あっしも、ここでまた長谷川様と、ご一緒出来るとは、夢のような心地で」と、目頭を押さえた。
鬼平:「まあ飲め、もう何も申すな」
鬼平:「おーい、とっつあん、熱いのを5~6本つけてくれぇ、」と、手を打ちながら、下の調理場に、自ら声を掛けていた。
密偵:「平蔵様、役向きのお裁きに、あっしらごときが口を挟むもんじゃ、ございませんが、あっしゃ、どうも、あの、漁火のお頭だけは、憎めないんでござんすよ」
密偵:「いったい、どうなさるおつもりで」
鬼平:「ああ、奴は、きっちりと昔気質の掟を守った、今時にしちゃぁ珍しい盗人だ」
鬼平:「人も、あやめてねぇし、でぇいち、あんなお人好しじゃあ、
それこそ、稼ぎも大した事あるめぇ」
鬼平:「お上にも、慈悲はある。」
鬼平:「人足寄場で、1年も修行すれば、真人間になって、戻ってくる事だろうよ」
鬼平:「あ、それからな」
密偵:「へい」
鬼平:「踏み込んだ先の盗人宿に、掟帳みたいな物が転がっていてな、」
鬼平:「きったねー字で書いてあるんだこれが、まずはじめに、人をあやめるな、これは分かるな、次、女は手籠めにするな、これも分かる、さて次だ、男を犯すな、いったいこりゃーどう言うこったい、」
密偵:「うーん、それはお仲間に、情の濃い姐さん達もいたもんで、きっちりと、決りを作っておいていたんでござんしょ、そういうお方でござんすよ、漁火のお頭は」
鬼平:「なるほどな、そうか、そんな色っぽい姐さん達なら、俺も、犯されてみてーや」
密偵:「ご゛、ご冗談を」
鬼平:「それでな、最後に書いてある所だけ、なんとも読めねーんだ
よ、上から消したような跡もあるしな」
鬼平:「おめー、これ読めるかい」と言って、懐から取り出した物を、密偵に見せると
密偵:「一目見て、ああこれでござんすか、こりゃー、貧乏人からは、奪わずと書いてあるんでござんすよ」
鬼平:「てぇしたもんだ一目見て、よくわかるもんだな」
密偵:「だから言ったんでござんすよ、あっしはね、貧乏人からなんざ、いくらも取るものはねぇし、やるだけ無駄だってね」
鬼平:「おめー、何かい、盗人に指南でもしてたのかい」と言われて、はっとした密偵は、話題を変えようと、急に盗人達のその後の事を、訪ねだしたのだった。
密偵:「ところで、長谷川様、ご牢内の、漁火のお頭達は、どんな塩梅でござんすか」
鬼平:「おう、それがな、何かえれー妙な事を口走っていると、牢番が度々言って来やがるんだ」
鬼平:「爪の間に、でけぇくぎをぶち込まれるのは嫌だ、だの、女を抱かせるといって千畳敷の石だけは、勘弁してくれだの、」
鬼平:「何が何だか訳が分からねぇんだが、おそらく誰かにでも、有りもしねぇ事を、色々と吹き込まれたか、それとも、風評妄想みたいなもんだろうとは、思ってるんだ」
鬼平:「何せ俺は、巷では鬼だからなぁ、おい」と、一瞬、凄味のある眼光を放った後、直ぐに穏やかな表情に移りながら、
鬼平:「それでな、牢番に、俺が火盗改めの頭になってからは、拷問なんて一切やってねーから、そう言っとけと、言ったんだ」
密偵:「なんだそうだったんですかい」と言って背を丸めながら
密偵: 「くっ、こりゃ少々、薬が効きすぎたかな」と、小声でもらした。
鬼平:「え、なんでぃ」
密偵:「いえ、」と、そこへ店の亭主が、熱いのを5~6本、持って上がって来た。
鬼平:「お、熱いのが来たぜ、一杯やってくんな、今日は無礼講だ、朝まで飲もうぜ」
鬼平:「この軍鶏のもつ鍋はなぁ、ごぼうのささがきをちょいと水にさらし、深谷ネギを斜めに刻んで、カツオと昆布でとった出しに、放り込むだけよ」
鬼平:「醤油も、ちょいと入れてな、あとは、捌いた軍鶏の肉と、もつを入れて出来上がりだ」
鬼平:「ほら、もうグツグツいいだして来たぜ」
鬼平:「こいつはもうたまらねー、先に食うぜ」
軍鶏鍋屋の、2階奥座敷の明かりは、いつまでも、二人を温かく照らしつづけていた。
作品名:盗人の掟 作家名:森 明彦