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陰陽戦記TAKERU外伝 ~拓郎編~

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「うわああっ!」
 鬼は勢い良く僕の間上に落ちて来た。
 僕は慌てて回避すると2本の足が僕のいた場所を轟音立てて踏み砕いた。
 僕はすかさず体制を立て直し、鬼もゆっくり膝を伸ばして立ち上がると僕の方を振り向くと目を見開いて威嚇した。
『ギシャァァアアァァ―――ッ!』
「くっ!」
 正直言ってこれは賭けだ。
 完全に50/50…… いや、10パーセントもあれば十分な方かな、何しろ僕にはギャンブルの才能がまるで無い、昔から何か賭かると確実に負けるジンクスがあった。
 中学時代修学旅行でババ抜きに負けて荷物持ちなどのパシリにされたりなんて良くある事だし、高校の時なんか人の金だと思ってゲームセンターで負けてハンバーガー・セット(しかもバーガー3段重ね、ポテト3L・スペシャルサイズ)を頼まれた。
 だけど今回はそんな遊びじゃ無い、失敗すれば全てが終わる、正直恐い…… でも僕は逃げない、僕には守らなきゃいけない人がいる、助けなきゃいけない人がいるんだ!
 僕は決意を固めて目を吊り上げた。
「また僕に力を貸してくれ、玄武っ!」
 僕は全ての願いを込めてハンマーを振り上げた。
 途端法力の全てが注ぎ込まれ、タイルをぶち抜いて土煙が宙に舞った。
『ギギっ?』
 鬼は驚いた。
 敵に攻撃しないんじゃ意味無いと思うだろう、だけどそんな事は無い、ちゃんと狙いがあった。
 ハンマーを通して僕の陽の氣が大地に伝わり、宙に巻き上った土や石が渦を巻くと僕の両腕、胴周り、両脛に固まって鎧となった。
 ゲームで言うなら大地の鎧って感じだな、時間が無いので僕は奴に向かって一直線に突進した。
『ギシャァアア――ッ!』
 鬼は両手から陰の氣を放つ。
 でも僕は両手を合わせて構えてそれを防いだ。
「くっ、キツイな……」
 僕は顔を顰めた。
 思ったより衝撃があった。でも怯む訳には行かなかった。
 奴の陰の氣は僕の鎧に防がれるけど、陽の氣を込めた所で所詮はただの土と石、その場しのぎの気休めでしか無かった。
 でもただの気休めじゃ無かった。
 僕の鎧が粉々になって全て消える頃にはある程度間合いが縮まった。
『シャァアアァァ―――ッ!』
 鎧が無くなった僕に今度は尻尾を伸ばして毒針を突き刺そうとする。
 勿論これも計算済みだ。
 僕は右手のハンマーに持てる全ての陽の氣を注ぎ込んだ。
 紫の光が渦を巻くと同時に周囲の空気が冷え始め、槌部分が凍り付いて行くと鋭い刃を形成して片刃の片手斧となった。
「はああっ!」
 それを下段に構えて一気に振り上げて鬼の尻尾を切り裂いた。
 途端切り裂かれた毒針付きの方は地面に落ちるとどす黒い瘴気となって消滅し、本体の方の尻尾も凍りついた。
『ギャアアッ!』
 鬼は目を見開き、体を仰け反らせて絶叫する。
 鬼が怯んでいる今がチャンスだ。
 僕は両足を揃えてジャンプすると冷気の斧を両手で上段に構えて落下の勢いを利用して鬼の頭めがけて振り下ろした。
「行けぇぇええぇぇ―――ッ!」
 僕は叫んだ。
 そして斧の刃が鬼の唐竹を砕いた。 
『ヌグァアア!』
 装甲を砕く音と供に鬼は悲鳴を上げて片膝を着いた。
 僕の陽の氣と鬼の陰の氣がまじりあい、手術室に閃光が巻き起こった。
 僕はタイルに両足を着けるとそのまま陽の氣を放出する。