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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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EMIRI どんなに素敵な昨日でも

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 この時恵美莉にはもう、ある決意があったが、それを躊躇していた。つまり、彼のことを「春樹」と呼び捨てに出来るようには、まだ越えないといけないハードルがあると分かっていたから。そしてそのハードルは、彼との間にあるのではなく、自分の心の中にあると言うことも分かっていた。

 午後、必修科目のリスニングの授業中、春樹からのLINEメッセージが入った。彼自身もランチタイムでの会話を不完全燃焼と感じていたのだろうが、それは少しタイミングが悪かった。恵美莉は少人数の授業で、頻繁に返信できる状況ではなかったが、スマホを机の陰にしてそれを確認した。

   菅生春樹
   [なんか元気ないね。大丈夫?]13:20

       既読[そんなことないよ。ごめんね。]

   菅生春樹
   [二人で話したいことあるんだけど。]13:21

                既読[今は無理。]

   菅生春樹
   [4時限目は?]13:21

            既読[授業ないけどバイト]
                 既読[3時から]

   菅生春樹
   [じゃ、明日ね。]13:21

                   既読[うん]


(煮え切らない! こんなのイヤだ)

 春樹の相談とはきっと、二人の交際についてのものだろう。でも恵美莉は素直に喜べなかった。颯介のことが吹っ切れていないし、周囲に急かされて春樹と付き合うというのも違う。そこに来て、春樹から直接「付き合ってくれ」と言われたりしたら、チェックメイト。成す術がない。
 心が決まっていても、まだ気持ちの整理がついていない。今も落ち着かない。聞き取り英語の授業では集中力を切らせられないし、他のことを考えている余裕なんかなかった。
 恵美莉は、この後のバイトで桧垣にすがるしかないと思った。