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お腹が空いた!

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 教室に帰って来た綾さんは、一子さんに食って掛かります。

「…どうして、わさび が入ってるの!」

「何を入れ様が…私の勝手だと思うけど。」

「食べちゃったでしょ!!」

「佳奈が…食べたら駄目って、止めてくれたよね!?」

 綾さん一瞬怯みますが、負けじと顔を突き出しました。

「─ この舌…何とかしてよ!」

「自業自得って、知ってる?」

 見兼ねた佳奈さんが、割って入ります。

「綾ちゃん、落ち着いて。」

 腕を引かれた綾さんは、一子さんから離れました。

 2人の横をすり抜け、空いた佳奈さんの席に腰を下ろします。

「…綾ちゃん? 私の鞄を、どうするつもり?!」

 鞄の物色を始めた綾さんは、顔をあげる素振りも見せません。

「口直しを…探してる!」

「自販機のジュースじゃ…駄目なの?」

 ファンシーな包みを発見し、開けて中身を確認する綾さん。

「シュークリーム!」

「─ 食べないでね?」

 顔を上げた綾さんに、佳奈さんは懇願しました。

「わさび…入ってないよね?」

「は、入ってないけど…」

 安心した綾さんは、シュークリームに手を出します。

「止めて! 綾ちゃん!!」

 声を無視して 口まで運ばれるシュークリーム。

「!!!」

 噛み締めた瞬間、涙で目を潤ませた綾さん。

 椅子を蹴倒す勢いで立ち上がるや否や、手で口を抑え、急いで廊下に走り出たのでした。。。


作品名:お腹が空いた! 作家名:紀之介