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神話

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なってる。彼に手伝って欲しいらしい。彼は何気なく了承した。

しかしイブは邪魔をした。
「アダムにリンゴを渡してはいけない。決まりだから破ってはダメよ。破れば貴方も主から罰を受ける
かもしれない。」

彼は主の存在を信じられなかった。仮に罰があったとしても木に縛り付ける程度の罰なら受け入れられ

る。そう考えた。
ただ彼がアダムにリンゴを渡す義理は無い。

彼はリンゴを一口食べてみた。
味は美味しい。イブが物欲しそうな顔で見ていたので「食べるか?」と聞いた。
イブは嬉しそうにリンゴを手にとった。
しかし、イブは食べるのを躊躇った。アダムが羨ましそうに見てる手前で自分一人だけ食べる事ができな
かった。

彼は一人でリンゴを食べた。
リンゴを食べ終わった直後、彼の視界は暗闇に包まれ、イブたちの前から消失した。


彼もアダムもイブも、また主さえ、彼に何が起きたかは判らない。
禁断の実は、ほんの少しなら素晴しく良い方に 効き、全て食べれば精神を破壊する
全てを食べれば宇宙を支配するほ程の力を持つ。その力は絶大で凡人には到底コントロールできるもの

ではない。
一口なら有益でも全てを食べるとどうなるか?
ひと呼吸の息で大地をなぎ払う体質へ変化し、一歩前に進むと宇宙の果てまで飛んでいってしまう程

に力が飛躍する。
容易に行きたい場所に行けず、行こうとすれば銀河や惑星に衝突して、それを破壊してしまう。
破壊した本人にとっては瞬く間の出来事であり、自身の身に何が起きているのか理解できない。
自分の身にどういう事情が起きてるのか理解し、コントロールはできなくて、永遠に自分の立ち位置を理解できず精神を病んでいく。つまりリンゴを食べた彼は地球に戻れない。彼は宇宙空間を漂う物理法則の一つとなった。

彼がリンゴを食べて破壊の存在になった瞬間、アダムとイブは死んだ。
2人の魂は肉体から解き放たれるも、みるみる内に再生して、元に戻った。
彼と2人が出会った事の記憶は全て抹消され、天界も何事もなく元通りで、リンゴの木も。。。
唯一の違いは宇宙の出入口に26体の何かが生まれでてきた事。
そしてアダムとイブは尚も、互いの背中を合され一つにされていた。



<アダムとイブの生まれた直後の時代>

凡そ500億年前、アダムは神により生まれた。その少し後、現在の宇宙が創造される前の宇宙にて、同じく「地球」と呼ばれる惑星が誕生し、そこにドラゴンが生まれた。
ドラゴンは、宇宙から舞い降りた宇宙人たちに、恐竜のDNAを操作して作られた生物であるが、そのドラゴンは天界、要するに神の世界にも行く事が可能だった。
悪魔アダムと宇宙人が関与する事で生物を天界へと誘導させる事が可能であった。アダムが神の知識を提供し、宇宙人は科学力を提供する。

天界はアダムと宇宙人にことごとく侵略された。
天界に住まう天子は食われ、その度に創造主は天使を創造した。その中の一人がイブである。
天使を利用してアダムを捕える事に成功するもののに、創造主にアダムはコントローできなかった。止むなくアダムを宇宙の外側に幽閉し事なきを得た。

だが、幽閉されたのは、アダムが作り出した人形だった。創造主は騙されていた。
アダムの生み出した人形はアダムの記憶をコピーしている。
アダムも本来は天使である為、その肉体を保持したまま地上には降りられない。しかし、宇宙人の技術力を利用する事で、下界に降りる事ができた。
アダム一人では何もできないが、宇宙人の技術と神の知識を組み合わせると絶大で、惑星に隕石を降らす事も大洪水を引き起こす事も容易であった。


[偽アダムとイブ]
今から約1億2000万年前。時間にして凡そ500億年間、偽アダムとイブは、互いの背中を合され一つにされていた。
それを彼がリンゴを食べる事によって破壊された。
破壊された偽アダムとイブは本来であれば死に幽界へと逝く決まりであったが、その場で再生された。
理由は全く判らない。そして更に判らない事に宇宙がもう一つ生まれた。
その宇宙は今あるもう一つの宇宙と全く同じ性質と形を保った宇宙であり、アダムとイブが居る天界の西側に存在する。天界の両側、東側、西側それぞれに全く同じ宇宙が対になって存在しはじめた。

アダムとイブは、2つの宇宙に挟まれた格好になった。

アダムとイブは再生と同時に、もう一つのアダムとイブが生まれた。それらは同じ座標にあり同じ次元にあるものの、互いに全く関与できない。
仮に一方のアダムとイブをA組とすると、一方のアダムとイブをBとする。
例えばAは宇宙には関与できるけれど、AはBには関与できない。Bは宇宙には関与できるけれど、BはAに関与できない。
ABは互いに実在するものの、互いに幽霊の様な関係性であるもの、宇宙的には幽霊でない様な存在である。

違いはB組のアダムとイブは「彼」が関与した際の記憶を保持している事。
要するに彼が関わっただろう宇宙と地球の存在について彼から聞いて知ってる状態にある。
このときB組のアダムとイブは好奇心で地球にい行きたいと願った。そして、どういう訳か、その瞬間、宇宙にある地球の天界の座標に宇宙の外側にあった天界(アダムとイブがいる場所)が丸ごと移動し重なった。
地球の天界と宇宙の外の天界は重なったものの、其々の天界人は其々の天界人と天界を認識できない状態にあり、関与できない状態になった。
つまり「彼」という天界人がアダムとイブに関与できたときの状況とは今は全く異なる状況にあるという事である。

当初、主はイブに対して 悪魔アダムを繋ぎ止める役目を任せ、天使たちには皆には
「くれぐれもアダムが実を採って食べぬよう、よく見張り注意するのじゃ!」と言っただけだった。
イブには「この実を食べてはいけない」とだけ 主から聞かされていただけ。これが、この世界で主が知ってる全ての情報であった。

つまり主自身には今の状況は何が起きたか全く判らない状況であり、原因不明である。
主は「彼が実を食べたのが原因かもしれない」という憶測はした。
主自身が実にどんな効能があるのかを知らなかった。根本原因があるとすれば、そういう事かもしれないが、それを試す為にはもう一度リンゴを食べてみる必要があるかもしれない。
ただ、そうしたところで何の意義があるのかは今ひとつ良くわからないところであるのは主自身自覚していた。


<イブの記憶>
「まあ、背中がくっ付いておるのじゃから、安心してよいがのう」そう言って
主は何所かに行かれた。
イブは「実を食べてはいけない」とだけ 主から聞かされただけ。
天子達は子供で好奇心から皆、すぐに地球に降りてしまい
天界は 「悪魔アダムとイブだけ」で 永く暖かな日々を静かに過ごした...
イブは背中がくっ付いているので、安心しきって、そのうち
何もかもすっかり忘れてしまった。

イブ達は(一つの木に宿る精霊のように)背中合せとなり、互いの顔を見る事なく
ただ、穏やかに過ごしていた。木は花が咲きほこり、艶やかな緑の実をいくつもつけた。
アダムは、実を採ろうと、木の棒でつついたり、あの手この手と、何度も頑張っていたが、
頭上の実まで 手が届きそうもなく諦めていた。
作品名:神話 作家名:西中