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かずきんぐ
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novelistID. 61939
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懺悔

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したがって、緊張も無論していたが、ワクワクする気持ちの方が勝っていたかもしれない。
僕は無事、新幹線乗り場にたどり着くことが出来た。
物覚えだけは昔からよかったため、すぐに覚えることが出来た。
現時刻、8時35分。
新幹線が僕の目の前で止まり、扉が開いた。
まるで希望への道が開くようだった。
これからの生活への希望を抱いて僕は乗り込んだ。
自分の席に座り、まずは自分を素直に褒めた。ここまでよくやったと。
僕は新幹線に乗りながら、祖父母が、初めて会う孫であり、いきなり現れた孫であるこの僕を受け入れてくれるか、とても不安だった。無論、僕も祖父母に初めて会うため、緊張しているのもあった。
そんなことを想像している内に、山形駅に到着し、乗り換えて祖父母が暮らしている庄和町に向かった。
無事に庄和町に到着することが出来た。
僕の目には期待以上の自然、見渡す限りの畑など壮大な美しいパノラマが広がっているはずだった。
しかし、現実は違った。
真っ暗すぎて殆ど何も見えなかったのだ。
それもそのはず、かなりの田舎のため、街灯がとても少なく、いや、ないと言った方が正しいかもしれない。
そのくらい暗かった。
まるで、この暗闇が僕のこれからの生活を暗示しているのかと不安な気持ちになったが、それをすぐに打ち消し、希望への第一歩を踏み出した。

4.恩恵

確か、祖父母の名字、そして母の名字は「神谷」だったなと僕は回想していた。
したがって、僕は神谷の表札が出ている家を捜索することにした。
時刻は11時を既に回っていた。
暗闇の中、探すこと15分。
凍えるほど寒い夜道を歩きながら、神谷の表札を探していたその矢先、神谷の表札を見つけることに成功した。
しかし、まだ祖父母の家なのかは、わかっていない。
僕は意を決して、チャイムを押した。
ピンポン!と僕の胸中、また、この暗がり静けさとは裏腹に甲高い音が鳴り響いた。
中から「はーい」と年配の女の人らしき声が聞こえた。
そして、扉が開いた。
僕は見た瞬間に祖母だと確信した。
とても母に顔つきが似ていたからだ。
祖母も僕が誰だかわかったようだ。
「優ちゃん…?」
「僕のことを知っているの?」
「もちろんよ。何度もあっているもの」
僕は「何度も会っている」という部分に疑問を持ったが、そんなことを考える暇もなく、
「さぁ中に入って。寒いでしょ」
と中に促されてしまった。
「とりあえずお茶準備しますね。喉乾いたでしょ?」
確かに僕は喉がカラカラだった。
僕の家とは比べ物にならないくらい小さく、こじんまりとした佇まいだったが、僕にはこっちの方が柄にあっているような気がした。
居間には祖父もいた。
僕は祖父に挨拶をした。
「こんばんは。いきなり上がり込んですみません」
「固い挨拶だな。」
と少し野太い声で言い、微笑んでくれた。
僕は、こんな僕を受け入れてくれたことに感謝の意を心の中で示した。
だが、未だ、「何度も会っている」という祖母の言動が気になっていた。
「さぁお茶の準備ができたわよ」
祖母が明るい口調で言った。
そして、皆でお茶の間の時間を過ごした。
とても幸せだった。
僕は早速聞きたかったことを単刀直入に聞いてみた。
「僕と何度も会っているの?」
僕がそう言うと祖父母は少し険しい顔をしたが、すぐに笑顔になり、
「会ってるよ。優子の出産の時も立ち会ったし」
と祖母が言った。
すると、今度は祖父が
「最近までは普通に仲が良かったんだ。しかし、あの出来事が起きてからは…」
祖父はそこで言葉をつまらせた。
僕はもうこれ以上聞くと、雰囲気が悪くなるのを察し、違う話題を振ることにした。が、その前に祖母が質問をしてきた。
「優ちゃんはどうしてこっちにいきなり来たの?しかもこんな夜中に」
僕は今までの経緯などを隠すことなく、全て語った。
すると祖母はそうだったの。と言って真剣な顔で聞いてくれた。
そして、
「そういうことなら、これからはここで暮らしましょう。私たちが責任を持って育てるからね」
と、とても優しい声でまた、とても優しい笑顔でそう言ってくれた。祖父もうんうんと頷きながら、笑顔を浮かべていた。
僕は嬉しさと感動のあまり、涙を流した。
祖母はよしよしと優しく頭を撫でてくれた。

それからの日々はとても幸せな日々だった。
祖父母からの愛情を受け、僕はどんどん学力が向上し、身長も伸び、すくすくと育っていった。
東京にいた時とは正反対の生活で、僕の表情は徐々に笑顔であることが増えていった。
そして、中学校に進学した。
無論、私立ではなく、公立だ。
でも、僕は公立でも十分に満足している。
それ以前に、この生活が幸せすぎて、中学校はどこでもよかった。
中学校の入学式の日。
僕は笑顔で祖母に送ってもらい、希望を胸に登校した。
正直なところ、小学校の頃にいじめられていたため、中学校でもいじめられないか、とても不安だった。
だが、その不安は入学式を迎えると同時に消え去った。
なんと、沢山の同級生が僕に話しかけてきたのだ。
山形は、中学校まで心優しいのかと僕は感心してしまった。
その中でも、より交友を深められたのは「新羅誠」という同級生だった。
僕に一番最初に話しかけてきてくれた同級生だった。
一番最初にということも交友を深めるきっかけになったが、何よりも、とても気が合った。ということが一番だろう。
僕が唯一、幼少期、両親から見るのを許されていたアニメである、ワンピースの話で盛り上がったり、勉強でわからないところも見事に合致し、一緒に先生に聞きに行ったりした。
毎日、一緒に登下校をし、放課後は一緒にスポーツをしたりもした。
無論、僕は今までスポーツというものを知らなかったため、誠に教えてもらい、スポーツの楽しさを知った。
ちなみに僕はサッカー部に所属することにした。誠と一緒に。
全くの初心者だったが、部活の仲間が丁寧に教えてくれたおかげですぐにルールやコツを掴むことが出来た。
部活の仲間にはとても感謝している。

実は、入学式の時、誠の次に話しかけてくれた女子がいた。
その時、僕は初めての感情を覚えた。
これが俗に言う恋だろうか。
僕にはわからないが、一目惚れしたのかもしれない。
名前は「森山千夏」
そこまで、ずば抜けて美人という訳では無いが、笑顔がとても美しかった。その笑顔から優しさが醸し出ていた。
実際に話してみても、イメージ通りとても優しかった。
その後も、交友を重ね、誠と帰らない日は都合が合えば、森山と帰ることになった。
そして初めて一緒に帰るチャンスが来た。
誠が勉強の補習を受けるため、居残りをするということだった。
これはチャンスと僕は肝を据えて森山に一緒に帰ろうと言ってみた。すると、
「喜んで!初めて優也くんと帰れて嬉しいよ」
と蔓延の笑みで言ってくれた。
僕は嬉しすぎて、また、森山の笑顔が美しすぎてキスしたい衝動に駆られたが、寸前で我慢した。
僕は帰路を森山と歩くことが出来て、有頂天になっていた。
ここで告白しようか悩んだが、やめることにした。
まだ少し早すぎると思ったからだ。そのくらい恋愛初心者の僕でも理解していた。
この頃から、結局勉強なんて意味は無いな。と感知していた。
作品名:懺悔 作家名:かずきんぐ