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かずきんぐ
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novelistID. 61939
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懺悔

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プロローグ

僕は小さい頃から、頭が良すぎた。
自分で言うのも嫌な話だが、それが事実なのだから仕方がない。
しかし、頭がいいだけでは結局、何も残せず、後悔の念だけが残るということをぜひ知って欲しいと強く願う。
強く願う理由を僕の少年時代の話と共に話していこうと思う。

1.変貌
話は僕が小学校を過ごしていた時の話から始めるとしよう。
あ、その前に自己紹介を忘れていた。「森優也」
これが僕の名前だ。この名前の由来は、優しく強く育って欲しいという両親の願いらしいが、僕は全く逆の人間に成長してしまった。
だが、決して、自分に非があるとは思わない。
これはこれでよかったと現在は思っている。
僕は小学校低学年までは、とても活発でよく遊ぶ元気な普通の男の子だった。今でも、あの頃の思い出は楽しかったということが自らの記憶に鮮明に残っている。両親が優しかったのもここまでだった。僕が高学年に進級したある日のこと。いつも通り、家に帰ったのだが、そこに優しかったあの母はいなかった。その代わりにとても恐い顔をした母が立っていて、こう言った。
「高学年に進級したお祝いにプレゼントを買ったわよ。優也嬉しいでしょ?」
僕はすぐに視線をしたに移した。その瞬間、僕は震撼した。
そこには山積みに積まれた、沢山の参考書、勉強道具、学習ワークなどがあったのだ。僕は、そいつらに今日から勉強漬けの地獄の日々が始まるんだよと、宣告されているような錯覚に陥った。
「これどうしたの…。全部やれってこと…?」
僕は引き攣った表情で母に問うた。すると、
「そうよ。高学年に上がったんだからこのくらい出来るわよね?」
母のこの言葉には威厳が含まれ、その後薄気味悪く笑った。まるでこれからの日々を物語るように……

あの出来事が起きた日からは、地獄の日々だった。
毎日毎日、勉強漬けの日々に切り替わり、そのせいで今までとても親しく親友だと思っていた友達にも裏切られ、それだけでも充分精神的にはきつかったのだが、さらに追い討ちをかけるように、いじめが始まったのだ。元から、か弱く弱気な僕は、いじめっ子からしたら格好の対象だった。本当に辛く、無惨だった。
そんな日々が長く続いたある日、とうとう僕は我慢の限界に達し、母に相談することにした。
「お母さん。僕、実は今いじめられていて、もう辛いんだ」
覚悟を決めて言ってみたのだが、期待した僕が馬鹿を見た。
「そんなの知らないわよ。辛いならもっと勉強を頑張りなさい。」
返ってきた言葉がこれだった。更に母は続けた。
「あ、そうそう。言い忘れていたけれど、優也には私立中学校に行ってもらうことにしたから。頑張ってね。」
一見、優しさが含まれているような言葉に聞こえるかもしれないが、実際は全く違う。とても無責任で、突き放すような言い方だった。そう言われ、僕はただただ呆然と立ち尽くす他ならなかった。
僕はその拍子に父をちらりと見た。父は僕を見つめ、悲しげな表情をしていた…
そんな日々をなんとかしのぎ、懸命に生きていた僕だったが、一つだけ嬉しい変化があった。著しく学力が向上していたのだ。
まぁ、毎日猛勉強をし、塾、英会話と通わされていたので当然と言えば当然なのだが。
そんな僕にもある夜、一筋のチャンスが訪れた。
父と2人で話す機会が巡ってきたのだ。僕はあまり父と会話をしたことがなく、久しぶりに話してみたいと思っていたため、これは思わぬ幸運だった。
僕の家は玄関から入り、まず右手にトイレがある。反対側には風呂場があり、その中心に位置している通路を真っ直ぐ進んでゆくと、もう一つ扉があり、その先にリビングルームがある。二階もあるのだが、それは次期に話すとして、本題に入るとしよう。
父はリビングにあるソファに座り、珈琲を飲みながら、ニュース番組を見ていた。母は今日飲み会のため、不在だった。
今は、午後6時であるから、きっと12時くらいまで帰ってこないだろうと推測した。
僕は父の隣でソファに座りながら、何気なくテレビを眺めていた。
すると、意外にも父の方から話しかけてきたのだ。
意外というのも、父はいつも母に押し切られていて弱気な所があるからだ。
僕は父のダメなところばかり似てしまったなと内心思い、苦笑した。無論、言葉には出さなかった。
「最近の学校はどうだ。楽しいか?」
僕がいじめられていることを知っていながら、聞いてくるとは僕に似て無神経な男だなと思ったが、これも言葉には出さなかった。
「全然だよ。本当に退屈だ。お父さんだって僕がいじめられているのを知っているはずだけど?」
「あぁ。すまん。実は大事な話があって、そっちに気を取られて無神経なことを言ってしまった。」
父はそう言うと、恐縮したような表情をした。
「大事な話?何かあったの?」
僕はその時無性に時間が気になり、何気なく時計を一瞥した。丁度9時を回った辺りだった。少し嫌な予感がしたが、気のせいだと思い、余り気に止めなかった。今思うと、不吉な予感がしていたのかもしれない。
「実は…母さんと離婚をしようと思う。」
「え…」
僕は言葉を失った。もちろんショックもあったが、それ以前にあの父がこんなにも大胆な決断に出ること自体に吃驚した。
「急でごめんな。だが、これもお前を守るための決断なんだ。わかってくれ。」
父のこの言葉は僕にとって、とても嬉しい一言だった。しかし、そう簡単ではないことは僕も理解していた。
「そんな簡単な話ではないよね。どうするの?」
「今すぐだ。今すぐしか、チャンスはない。必要最低限の物を持って、逃げよう。」
父が、そういった直後、背後に嫌な気配を感じた。
僕が振り向くと、そこには今まで一度も見たことがない程、怖い顔をした母が立っていた。
あまりの驚きに僕は腰を抜かしてしまった。
「何か嫌な予感がしたのよ。やっぱり私の勘は当たっていたのね。」
母が怒っている時は決まって冷静を装おうとするが、僕にはその恐ろしい顔の奥に隠された怒りに気がついていた。
僕は何か言葉を発しようとしたが、まるで金縛りのように体や口の自由が効かなかった。父が僕の代わりにその乾ききっているであろう口を開いた。
「すまなかった…許してくれ。」
父は完全に萎縮し、どっぷりと脂汗をかいていた。意識が朦朧としている僕の目からでも分かる程だ。
「残念だけど、離婚はさせないし、逃げさせることもしない。ここであなたに逃げられたら、優也を私立に行かせられなくなってしまうもの。」
父は深く考え込んだ様子でこう言った。
「じゃあ、わかった。お金だけ渡すから離婚しないか。」
僕は自らの耳を疑った。お金だけということはつまり、僕をこの恐ろしい母の元へ置いて、自分だけ逃げようということだ。
なんて最低な男なんだ。と小学生ながらにこの男を軽蔑し、父と呼ぶことも嫌になった。
「さっさと出ていってよ。私は優也と2人の生活を楽しむから。」
絶対こんなの嘘だった。楽しい?そんな生活を頭に想像させることさえも出来なくなっていた。それ程まで、僕の心は痛み、病み、苦しんでいるように感じた。
その後、男は本当に出て行った。
母との生活は不安や恐怖に支配させることになることを悟った。

2.残虐
作品名:懺悔 作家名:かずきんぐ