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レイドリフト・ドラゴンメイド  第27話 この宇宙域

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 だが、もともと壊れかけだったため、天上人の金色の嵐を受け、今にも消えそうな様子で揺らめいている。

 バリアの隙間で、金の台風がさらに光を増す。
『! まずい! スーパーディスパイズを狙う気だ! 』
 光の正体は猛烈な、自然界ではありえないほどの雷だ。
 それをコントロールする電磁波を、オルバイファスのセンサーは捉えていた。
 そして結論付けた。
 巨大な雷が、ポルタに集中して動けない灰色の巨神を狙っている。
 
 彼の主砲が熱を帯び、雨を蒸発させる。
 目には見えないが、放たれたのは2本のレーザー。
 レーザーは雷とスーパーディスパイズの間で交差し、交差点の空気をイオン化する。
 その交差点を地面まですばやく往復させる。
『目と耳を閉じていろ! 』

 天上人の雷が発射された。
 肌を打つ衝撃と、轟音、目をつぶさんばかりの光をともなって。
 しかし、オルバイファスが作ったレーザーの交差点で、すべて地面に落ちた。
 イオンは電気を通す。彼が作ったのは巨大な避雷針だった。

 そのバリアの隙間に、サイガの蒼い煌めきがやって来た。
 全長70メートルの龍も画面では小さな青だが、確かにわかる。
 サイガの前で金色の台風が、まるでカーテンを左右に開く様に消えてゆく。
 天上人の支配から解き放たれ、ただの雨となってしまったのだ。
 まるで滝だ。
 数秒後、巨大な叫び声が響いた。
 全ての水を支配する龍神の声だ。
 歪められた台風による山火事も、復元された雨によって消火される。
 その中で天上人の金色の光は消えていった。

 サイガが台風に向かったため、それまで相手にされていた地中竜や海中樹が逃げ始めた。
 その相手はPP社のアパッチ、コマンチ、ハインドと言った戦闘ヘリが引き継ぐ。
 
――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――

「ショックで引きこもった。広大な森林地帯タイガや、極寒のシベリアに。
 ロシアは地球で最も広大な国土を持つ。タイガやシベリアはそのロシアを横断する。
 異能力もそこで手に入れた。
 偶然ポルタが開き、そこから現れたドラゴンが付近の村を襲っていた。
 そいつを狩ったからだ」
 説明を続けるカーリタース。
「テレジが日本へ来たのは、たまたま密航してた船が、日本行だったから。
 それに、ロシア軍も日本に留学させた方が後あと役に立つと考えたため、魔術学園に入学できた。
 在学中のほかのカテット生徒は、怖がって行きたがらなかったそうだ」

「カーリタース、いい説明だ。だが、なぜ紹介した? 」
 シエロが心底不思議そうに聴いた。
「え? だって、1人だけ外すのはかわいそうじゃないか」

 反論はなかった。
 代わりに、ドラゴンメイドが不満そうに言った。
「そろそろ、引き出物を見てくれない? 」
 そして、強引にライブ映像を消した。

――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――

 消える直前の映像では。
 川の向かい、浄水場のある町が、バラバラになって地面からめくり上がっていく。
 ノーチアサンの70メートルの巨体が滑り込んできたのだ。
 その全身に防衛隊と三種族が持ちうるすべての攻撃が炸裂する。
 しかしノーチアサンは、バリアとはこういう物だ。と言わんばかりに、雨あられの攻撃を弾き返す。
 彼は騒音と瓦礫と共に川を渡り、船首を対岸へ乗り上げさせた。
 ここでも臨時の橋となる。

――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――

 シエロが一言つぶやく。
「地下要塞の病室。そこの士官候補生が見たい」
 音声検索が、それをかなえた。
 
 新たなウインドウ。
 そこには、城戸 智慧のテレパシーにより、熱を出して寝込んだという若者たちが眠るベッドがある。
 若者たちだけではない。
 年配の正規軍、地域防衛隊もいる。
 その視線はこちらを。正確にはこの映像を撮影するカメラの横にあるモニターを見ている。
 向けられた顔は、おびえるか、怒りをかみ殺している物ばかりだ。

 それなら、とシエロは、できるだけ落ち着いて話すことにした。
「これから、ボルケーナから送られた……結婚記念の引き出物の映像が流れる。一緒に見よう」
 それで、彼らの心が少しでもリラックスできればいいと願いながら。

――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――

 それは、ボルケーナのナレーションから始まった。
『ここはフセン市役所の地下。臨時市長室です』

 市長室と言われたが、映るのはトラックコンテナを思わせる、四方を鉄の板でおおわれた狭い空間。
 中には、5つのベッドが窮屈そうに並んでいる。
『ここで眠るのは、テレパシスト城戸 智慧の両親。
 それと杉井 おかき、五浦 和夫たち、トップ・オブ・ザ・ワールドのボランティアたちです。
 ここと同じような簡易シェルターが、会議室や廊下に並んでいます。
 生徒会の家族が眠っています。
 誰もが生徒会に戦場へ行く事を反対しました。
 でも戦わなければ、科学者たちに他の世界へ飛ばされるかもしれない。
 結局、城戸 智慧のテレパシーで眠らせ、ここへ連れてきました』

 士官候補生の知らないシェルターだった。日本から持ち込まれた物だ。
『コンテナの表面には魔術から守るため、ルルディ文字が描かれています。
 ドアは2重で、ドアの間に、つめれば大人2人分のスペースがあります。
 外のドアを開けて人が入り、1枚目を閉めた後、内のドアを開ける完全密封の仕組み。
 ライフル弾さえ防ぐ防弾ドアです』

 そのドアが、2枚とも空いていた。
 その向こうには、まだハッケの車椅子に乗っていたころの智慧がいた。
 そして深々と頭をさげている。
『起きたら、お叱りでもげんこつでも、何でも受けます』
 そう、眠らせた両親に語りかけた。
 となりにいたボルケーナ人間態が、ドアを閉める。

 ベッドと壁のわずかな隙間。体育座りをすると、ぎりぎりのスペース。
 そこに座る生徒会長のユニバース・ニューマン。
 その隣には副会長の石元 巌。
 もう一人の、ボルケーナ人間態。

 起きているのは、この3人だけ。
 ユニと巌の間には、ユニの息子クミが、2人の袖をしっかり握ったまま眠っていた。
 子供とは思えない力なのだろう。きつく握られた手は血が巡らないため真っ白になっていた。
 ユニと巌は、自分たちを離さない手を、ゆっくり、もみほぐしながら開いていく。

 しばらくして外側のドアが開き、内側のドアがノックされた。
『入りますよ』
 ボルケーナが答えた。
『どうぞ』
 入って来たのは、前藤 真志・内閣総理大臣。
 危険がせまると痛むという、腹の古傷を手でかばっている。
 次に入って来たのは防衛大臣。
 ドアは2枚ともあけられたまま、内閣官房参与。官房副長官。外務大臣たちが次々に入ってくる。
 一緒にスイッチアへやって来た政治家たちだ。

 これまでは、一度の攻撃で政府機能が失われるのを防ぐため、バラバラに行動していた。
 それがそろうという事は、一大事だ。3人とも目を丸くした。