小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

あの日、俺はヒーローを想うヒロインに恋をした。

INDEX|6ページ/15ページ|

次のページ前のページ
 

球技大会

 今日は球技大会だ。俺の高校ではバスケとバレーと卓球でそれぞれトーナメントが開かれ、学年関係なくチームが当たる。
 俺はバレーで参加するのだが、どうやら河原もバレーで参加するらしい。

(河原のチームと当たるかもしれねぇな……その時は絶対負けねぇ!)

 闘志を燃やしていると、同じチームの級友が「波多野」と俺を呼んだ。

「バレーやるのめんどくせぇけど、まあ、てきとうにやろうぜ」

「……てきとうにやる?やるなら目指すは優勝だろうが」

「そういうの暑苦しいから」

 級友はふわぁ、と欠伸をする。
 他の級友も気だるげな様子で、俺は内心で溜め息をつく。

(まあ、進学校の球技大会はこんなものか)

 進学校は勉強に力を入れているから、学校行事よりも勉強の方が大事なのだろう。

「三年生のチームには当たりたくねぇな。あ、でも当たった方がすぐ終われて楽か」

「だな。早く終わって欲しいよな」

「バレーするのは疲れるもんな」

 やる気のない級友達の発言に、俺は再度内心で溜め息をついた。


 バレーの第一試合は、河原のチームと三年生のチームが当たるらしく、俺はその試合を観戦席で観戦することにした。

(河原はバレーは上手いのか?)

 河原の姿を探して、ゴーグルをつけている男――河原を見付ける。
 河原は笑顔でクラスメートと何かを話していた。

(……こうして見ると、あいつ、顔はいいよな)

 まあ、俺の方が上だけどな。
 心の中で張り合っていると、級友が話し掛けてきた。

「三年生のチームに当たるなんて、あのチーム、ついてねぇな」

 確かに、身長的にも経験的にも一年生より三年生の方が有利だ。

(河原のチームに当たることはなさそうだな)

 そう思っていると、試合開始のブザーが鳴った。
 三年生の一人がサーブを打つ。
 一年生の一人がレシーブをして、ボールが空に上がる。

「任せろ!」

 一年生の一人がボールに手を伸ばしてパスをする。
 しかしパスミスをしたようで、ボールはコート外に逸れていく。

「あ、すまな――――」

「うおおおおおお!!!!」

 雄叫びと共に、物凄いスピードで一人の一年生――あれは河原だ――が、ボールに突っ込んでいく。

「どりゃあ!!!!」

 バチン!!!

 河原が叩き付けるようにボールを打つ。
 ボールは二人の三年生の間にドスン!!と音を立てて落ち、バウンドしてコートの外に転がった。

「…………」

 沈黙が辺りに流れる。
 誰もが茫然としている中、我に返った審判がピピーと笛を吹いた。

「うおおおお!!」

 遅れて歓声が上がり、どよめきが起こる。

「何だ今の!?人間の動きじゃねぇ!!」

「あいつ一年だろ!?大したもんだぜ!!」

 茫然と河原を見ていた俺は、周りの騒ぎに我に返る。

(あいつ……ただの風が大好きなだけな奴じゃなかったんだな)

 コートから外れたボールを叩き付けるなんて、相当な運動神経の持ち主だ。

 一方的になると思われた試合は、河原の活躍より覆された。

「うおおおおおお!!!!」

 バチン!!!

 雄叫びを上げながら河原がスパイクを打つ。
 ボールは勢いよく進み、誰もいない箇所にドン!!と沈み込む。

「うおーーー!!!」

「すげえぞあの一年!!!」

 河原が点を決める度に歓声が上がる。それ程河原のプレーは目を引くものだった。

(河原……)

 真剣な、しかし楽しそうな表情を浮かべている河原を見て、俺はごくりと唾を呑み込む。

 その後も河原は活躍を続け、試合は河原のチームが勝利した。
 興奮が収まらない中、俺はクラスメートに囲まれて笑っている河原を見る。
 バレーをしている河原は、正直かっこよかった。

(小糠があいつに惚れるのも、ヒーローだって言うのも分かるな)

 コートの中心に立つ河原はまさしくヒーローで、誰よりも輝いていた。

(……俺も、負けられねぇな)

 俺は改めて闘志を燃やすのだった。