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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 前編

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「なにもー…まぶしー…」

辺りが昼間のように明るくなり、目を覚ました颯馬が恨めし気に言うが、構っていられない。伊吹は耳を塞ぐように頭を抱え、真っ青な顔で横たわっている。きつく目を閉じた表情は苦しそうで、明らかに様子がおかしい。

「先輩起きて!」

ただごとじゃない様子に伊吹の身体をゆすった。切羽詰まった瑞の声に、颯馬も異常を察して布団から出てきた。

「来る…」
「え?」
「近づいてくる、見られている…」

うわごとのように伊吹が繰り返す。くる、くる、くる。

「!」

バン!と大きな音がして、辺りが漆黒に包まれる。電気が落ちた。

「瑞くん、聞こえるよ」

颯馬の緊張した声に、瑞は暗い襖の向こうに神経を集中させた。

ギィー、ギィー、と何かが軋む音がゆっくりゆっくりと響いている。

「歩いてる…よな?」
「うん。近づいてる。居間のほうから」

襖の向こう。足音が軋みながら近づいてくる。そして、通過していった。ゆっくりと、遠ざかっていく。声を殺し、足音の行方に耳をすませた。ゆっくりと、ゆっくりと、その音は遠ざかり…。そして。

「戻ってくる」