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蒼い無限

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というわけで、このロゼット鑑賞デートの日から、俺たちの仲はいよいよ深まった。




1018 アノニマス 2017/02/02(日) 01:20:20 q9Lk7qN2f64y
>>1016 自虐風自慢の要素があるのは認める。ただ、あいにく、俺は実際バカなんだ。
>>1017 おっぱいは綾瀬はるかじゃない。


今でも、ミスチルのしるしやコブクロの蕾、
彼女が上手に歌ってくれたキロロの歌あたりを聴くと、彼女との思い出が蘇ってくる。

例えば、俺にとってインパクトがあった1つは、初めて彼女の自宅の自室に行った時か。
大学時代に遡る俺の前カノはそうじゃなかったからびっくりしたんだが、
やけにたくさんのぬいぐるみがあった。
「捨てるタイミングが無くて」って、恥ずかしそうに笑っていたな。

彼女の誕生日にからんで、俺ができた贈り物のことも忘れられない。
誕生日にはそれなりに値が張るアロマグッズを贈ってやったが、
それではなくて、無関係の時期に偶然できた、値段の無い贈り物だった。
彼女の下の本名は、彼女のおじいちゃんがくれたらしい、
自他ともに認める昭和ネームだった。
で、さて、例えば「英子」の文字は十(10)・十(10)・央(オー、0)・子(こ、5)の
形と語呂に分解して、そこから10/15を導き出したりできるが、
彼女の名前は彼女の誕生日を導き出しやすかったんだな。
このリマインダーに気付いて彼女に説明すると、
彼女は「昭和ネームでも、前よりずっと好きになった」と言って喜んだ。
おまえが年を取って自分の誕生日を忘れた時にもこれで思い出せるな、と俺がからかうと、
何かのスイッチを入れてしまったようで、涙ぐまれてしまって戸惑った・・・

他、書き切れないので割愛するが、
とにかく美人で、しっかりしていそうででもどこか抜けていて、どこかはかなげで、
俺は本当に、彼女のことを好きだった。




1019 アノニマス 2017/02/02(日) 01:43:37 q9Lk7qN2f64y
けれど・・・彼女は抜けてくれていたままで全然可愛かったけれど、
おまえらも思うだろうとおり、俺は、俺自身や嫁になってくれる女やお袋や親父のために、
そのバイト生活に浸り続けるわけにはいかなかった。
深く考えないようにしていた身の振り方を決める必要と意欲が、日々強まってきていた。
ところで、俺は冒頭で「旧帝法学部を出て一部上場企業に勤め」と書いたが、
これには経緯がある。
俺の大学在学当時はまさに司法制度改革の大嵐の真っただ中で、
法曹になる道筋も混乱し、なれた場合でも人員増による過当競争の懸念が生じていて、
何やら見通しが分かりにくい状況に陥っていた。
それで俺はその混乱を避けて別の道を選択していたというわけだが、
俺が26の誕生日を迎える頃になるとロースクールも開校後数年を過ぎて、
旧知からもその実情や合格の声が聞こえるようになっていた。
つまり、俺としては、リターンマッチの時期が来ていると思っていた。
そして、多少合格しやすくなったというイメージが流されていても、
それでも心身を著しくすり減らすだろう挑戦、いつ終わるか分からない挑戦、
三振というバッドエンドも待つ希望の覚束ない挑戦を、
彼女を抱えながらやるわけにはいかなかったんだな。

俺は、俺の誕生日を祝ってもらってから間も無くに、とうとう別れ話をした。
・・・俺は頭が良いようなフリをしたがるが、決してそうじゃあない。
俺より優秀な連中はゴロゴロいて、でもこれからその連中と競わないといけない。
俺はバカで、カネも無くて、将来も覚束ないだめ男だから、
どうか俺のことは忘れて、早くまともな男に幸せにしてもらってほしい。
おまえぐらい可愛ければ、もっと良い相手はいくらだっているから、と・・・
彼女は、泣いた。「置いていかないで」と言った。
俺も、泣かざるを得なかった。
それでも、別れるしかなかった。
どうやっても数週間や数か月では済まないし、絶対に待たせたくなかった。
「今は悲しいけど、これが一番なんだ」と彼女に言っては泣かれ、
俺自身に言いながら泣いた。

そして、挫折後約2年に渡った俺の休息は、ついに終わった。




1021 アノニマス 2017/02/02(日) 02:06:54 q9Lk7qN2f64y
>>1020 書き溜めてないからもう寝ろ。よければ、起きてからまた読んでくれ。


リサイクル店も辞め、懐かしい灰色の生活が、改めて始まった。
ところで、かつて味わった激務は、徒労ということは決して無かった。
タフネスの上限を上げられたと同時に、
その上限を軽視してはならないのをよくよく承知させられた。
「自分が影響力を及ぼし得る範囲を・物事の処理手順をいかにホワイトに組み立てるか」
という課題についてあの時期考えては実践し、
「休息」に入ってからも、それを研究し続けていた。
いや、まあこの話は細かくはしないが、
もはや彼女と一切連絡すること無く勉強に専念し、
まずは1年後に、志望ローから合格通知を勝ち取った。

と、そこで、俺は余計なことを思いついてしまった。
一息つけて少し浮かれて、その勝利を彼女に伝えたくなってしまった。
それと、「早く他の男に幸せにしてもらってくれ」と言ったそれが、
実際どういう状況か知りたくなってしまったんだな。
思い切れず残してあったメールアドレスを選んで、思い切って送信・・・
と、数時間後に帰ってきたメールは、至極短いものだった。
「婚約者がいるので、もう連絡しないで下さい」

まあ、苦笑したよ。
「俺のことは忘れろ」とか、「おまえにはもっと良い相手がいる」とか、
自分から言い放ったことだった。
そして1年は、それぞれに別々の時間が流れるのに、十分に長かったんだな。
恥ずかしくない、悔しくないと言えば、完全に嘘だった。
「最後に1つだけ。いつまでも元気で」
これを発信して、俺はやっと、彼女のメールアドレスを削除した。
・・・相手の男は、スタッフ? 客? それとも?
頼もしさもズボラさもある、ワルい俺様男なのだろうか。
カネはあるが物覚えが悪くなり始めた、中年男なのだろうか。
いや、まあ、彼女が幸せになるのであれば、どちらだってかまわない。
とにかく幸せになってほしい。
加えて、彼女の誕生日が毎年間違いなく祝われていくために、
俺が気づいたリマインダーがささやかであれ役に立つことがあれば、
それが俺の喜びか・・・

そして俺は、再び地元を去って、ロースクールにおける生活へと旅立った。




1023 アノニマス 2017/02/02(日) 02:36:07 q9Lk7qN2f64y
それから、時間は跳ぶ。
熾烈な競争の果てに、31になった時に、俺はやっと悲願の合格を勝ち取った。
そして32の時に、司法修習の最終試験をクリアした。
民法大改正なんて巡り合せもあって心労もひどかったが、それは本筋ではないのでさておいて・・・
今日みたいな冬のとある日に、地元のまあごく少数の、特に親しかった同級生が、
俺の祝勝のために、個室のある飲食店に集まってくれることになった。
草食系メンバーのプチ同窓会になったわけだが、
作品名:蒼い無限 作家名:Dewdrop