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レイドリフト・ドラゴンメイド 第25話 白旗騎士団

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 普通の家々は、つま先にさえ届かない。

『下半身は、宇宙空母インテグレート・ウインドウが合体している。
 パイロットはレイドリフト・マイスター。
 1号以上のミーハーなのは問題だが、頭は切れる。
 4人のまとめ役だな』
 模様は、艦載機への目印だった。

「ミーハーではありません。
 最新技術に気を配っているだけです。
 彼の方がお金をもっているのは事実ですが……」
 1号は悔しそうに言った。
 だが、聴いている者は誰もいなかった。

 巨大な光源は、金属の手で、正確にはそこに発生するバリアで握られていた。
 太陽をいくつも、まっすぐに並べたような、槍。
 スーパーディスパイズの身長に負けないくらいの、槍。
 それは2隻の巨大戦艦のような腕で支えられ、頭上のポルタを貫いた。

 ズズウゥゥゥゥゥン

 その時の衝撃で、降り続いていた雨が一斉に地面に落ちた。
 あれが、達美専用車を揺らした衝撃だったのだ。

『そしてあの槍。
 あれも、レイドリフトの一人。
 レイドリフト・メタトロンだ』

 バイトの腕が、ぐりぐりとメタトロンの槍をねじる。
 そのたびに、ポルタのふちが円く、大きくなっていく。
 まるで粘土だ。

『少し長くなるが、聴いてくれ。
 あの槍の中に、カラフルなガスがマーブル模様を描いているな?
 ……まぶしくて見えんか。あれは、星間ガスでみちている。
 太陽のように見えるのは、一つ一つが中心にブラックホールを持ち、凄まじいエネルギーを放つクエーサー。全部で73個ある。
 しし座にあるクエーサー群、U1.27。
 クエーサーが40億4000万光年もの長さで数珠繋ぎになった宇宙の巨大構造物だ。
 これは地球人類が観測可能な宇宙の23分の1に相当する大きさで、宇宙は均一ではないという証拠でもある。
 それが力の根源だ。
 U1.27は、複数のブラックホールで平行世界への穴をあけることで、さまざまな可能性を引き寄せていた。
 しかも、その影響で自我が生まれた。
 さながらニューロンと呼ばれる脳細胞同士が神経を結び合って思考能力を鍛えていくように、ブラックホール同士を結び付けたのだ。  
 そこで問題が起こった。
 知性を手に入れれば、それを使ってみたくなる。それはU1.27も同じだ。
 だが、グレートウォールの文明では、その力を受け入れてくれる学校も就職を許す仕事場も無かった。
 だが、宇宙は広い物だ。受け入れるやつもいたのである。
 名前は伏せておくが、確かに天才的天文学者だ。
 天文学者は常日頃から、宇宙の物理法則について考えをめぐらせていた。
 宇宙の物理法則とは、私たちが知るものだけではないはずだ。
 異能力者の存在が、その可能性への憧れを掻き立てた。
 そこで利害が一致し、天文学者はU1.27の力を受け継ぎ、U1.27は地球で働き始めた。というわけだ』

 カーリタースが、恐る恐る手を上げた。
「し、質問です。
 ボ、ボルケーナ様と、どちらが強いのでしょうか? 」
 へえ。と、オルバイファスは意外そうに笑った。
『お前も男の子だな。そこに興味があるか。
 実のところ、分からない。
 なぜなら両者とも、我々のいる次元だけではなく異世界にも体の一部を持っている。
 そうすることで、異なる物理法則を操る力を得る訳だ。
 それらは、常にコントロール下にあるわけではない。
 むしろ自分の裁量で行動できる。それが分身体だ。
 そういう時は、互いの行動を予測しながら計画を組み立てる訳だ。
 それらを集めて、全力でぶつけあう事は、事実上不可能だ』

「どんな銀河も壊れちゃうからね~」
 ドラゴンメイドが茶々を入れた。
 その時、気が付いた。
 おとなしくワイバーンと共に仕事をしていると思っていたが、その尾はしっかりとワイバーンの腰に巻きついていた。

『川の上流を視ろ。白い旗をつけた車が、何台も来るぞ。
 白い旗は、地球では非武装を表す』

――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――

 カメラは川上を拡大した。
 ゆるく曲がった流れ。それを断ち切るように、砕けたコンクリートや鉄骨の瓦礫が沈んでいる。
 地域防衛隊に落とされた橋だ。
 この道をカメラから見て左に行けば、大聖堂へ続く。
 ここでも、火の手が上がっていた。
 倒壊した建物も多い。地味は閉ざされてしまったに違いない。

 と思ったら、その瓦礫が吹き飛んだ!
 瓦礫の中から現れたのは、巨大なドリル。
 それを支えるのは、車体の下全てを動かす、4つのキャタピラ。
 すでに失われたはずのチェ連陸軍の兵器、岩盤突破戦車だった。

 さらに、周囲の燃える家も、巨大な力で根こそぎ切り倒され、弾き飛ばされる。
 それをするのが円形の刃をうならせる、動力のこぎり。
 これも岩盤突破戦車と同じ車体が支えている。
 森林突破戦車だ。

――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――

 まだ使えるチェ連戦車があったのか?
 国民を救える力が!
 そう思うことが、チェ連の少年少女に希望の灯をともした。

 だが、オルバイファスの説明は、残酷な衝撃となって聴く者を襲った。
 説明した彼に自覚はなくとも。
『岩盤突破戦車は料理部部長、ダッワーマ。
 森林突破戦車が美術部部長、クライスだ。
 2人とも、我の元部下で、同じ金属生命体だ』
 
 見れば、川の対岸にはフーリヤが降りてきた。
 翼の端から端まで30メートルにわたる鴉のような姿と、凧のような8本の足。
 そしてダッワーマやクライスと同じように、周囲の家々を壊し始めた。
 たちまち川の両岸に空地ができた。

 上空には、全長170メートルに達するサメ型宇宙戦艦、ノーチアサン。
 下の川幅は60メートルだから、着地すると余裕で船体がとどいた。
 船体前後の傾斜版を下せば、応急の橋になる。

 橋に、次々に乗用車がわたっていく。
「オルバさん、あの車たちをはっきり見せて」
 突然、ドラゴンメイドが割って入った。
『ああ、見せるつもりだ。君渾身の選定だからな』

 川を渡る車列。
 その1台1台が拡大され、くるくる回る3Dとなってしめされる。
 当然それは、民間人が持つ、ただの車両のはずだ。
 だがトラックや、日本人の感覚からすれば精錬されていない車に混じって、感じが違う車が混じっている。
 ある1台には乗車人数が2人にもかかわらず、エンジンに大きなチャンスを与えていた。
 またある1台には、4・5人を運べる機能に不要なほど、複雑な空力特性を重視したボディを持っていたり。
 しかもその車体は、さびも歪みもなく、艶やかなペイントが施されていた。
「やはり、幻じゃなかったんだ! 美しい」
 カーリタースが、うっとりしている。

『そうだ。あれはスポーツカーという。
 機械工学の粋を集め、純粋に速さを追求した車だ』
 そしてその車体には、必ず短い棒に、白い布がしばりつけてある。

 CGのスポーツカーがドアを開け、中から様々な物をだした。
 地味な車からもでてくる。
 この地味な車にも、白い旗があった。