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擬態蟲 上巻

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序 伝説


【擬態蟲】序 伝説

http://www.youtube.com/watch?v=f-QXl7zBKQ&feature=related
Aram Khachatryan - Gayane - Gayane's Adagio

東晋の時代、農村に住むある男が娘と飼い馬をおいて、遠くに旅に出る事になった。しばらく経っても父親が帰ってこない事を心配した娘は馬に向かって冗談半分で
「もし、父上を連れ帰ったら、私はあなたのお嫁さんになりましょう」と言った。馬は家を飛び出して父親を探し当てて連れ帰ってきた。
馬の様子がおかしい事に気付いた父親が娘に問いただしたところ
事情を知って激怒し、馬をその場で射殺してしまった。
その後、父親は馬の皮を剥いで毛皮にするために庭に放置して置いた。
そんなある日、娘は庭で馬の皮を蹴りながら
「動物の分際でわたしを妻にしようなどと考えるから、このような目にあうのよ」と嘲笑した。
すると、娘の足が馬の皮にくっついて、そのまま皮全体で娘の全身を覆いつくした。身動きが取れなくなった娘は転倒してそのまま転がりだして姿を消してしまった。父親が必死に探したものの、数日後に見つけたときには馬の皮は中にいた娘ごと一匹の巨大なカイコに変化(へんげ)していたという。

日本の東北地方に残る、「おしらさま」の成立には似たような伝説がある。農家の娘が飼い馬と仲が良くついには夫婦になってしまった。
娘の父親は激怒し、馬を殺して木に吊り下げた。
娘は馬の死を知るとすがりついて泣いた。
すると更に父親は激怒し馬の首をはねた。
娘は馬の首に飛び乗り、天空を駆けそのまま「おしらさま」になった。
その後、娘は両親の夢枕に立ち臼の中の蚕を桑の葉で飼うことを教え
絹糸を産ませ、養蚕業の由来となった、という。
中国にはじまった養蚕は、弥生時代の日本に伝わったとされる。
古くより人との係わりをもって生きてきた蚕は。
現在では野性回帰能力を完全に失ってしまって家畜にされた昆虫で
野性には生息しない。

作品名:擬態蟲 上巻 作家名:平岩隆