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死闘のツルッペリン街道

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「私の名前はラバナ・バゲット。ラバナでいいわよ、よろしくね」
 ラバナは更に両手をスカイとバゲットの握手の上から被せて握手した。
 ラバナが近づくと猛烈にニンニク臭かった。
 スカイは、たまらず手を離した。
 スカイは言った。
 「おい、お前、朝から、すっげぇニンニク臭ぇよ」
 バゲットは言った。
「交渉成立という事で」
ラメゲは言った。
「オマエ等。オレが食っている上で騒いでいるなよ。ニンニク臭いな」
 ラメゲが紙のコップに入ったコーヒーを飲みながら顔をしかめて言った。ラメゲはダンジョン競技のモンスター役のダンジョン・ストーカーズの一人だった男で、スカイ達より、かなり強かった。
ルシルスの声がした。
 「あのう、スカイさん、お金を払って下さい」
ルシルスが白い神官着の裾を引きずってやって来た。
 この女は二重人格で片方の人格のサシシ・ラーキから、ルシルスと言うグズでドジでドベな人格に移り変わったらしい。前の人格は殺人宗教、殺しの秘文字教の邪神官サシシ・ラーキだった危険な女だ。
 バゲットは言った。
 「う、美しい」
 そう、確かにルシルスは美人だが。外見年齢二十八で実年齢が半分の十四だった。
そして、この女は犯罪的に美しい美人だった。だが何となくインチキ臭い部分が在るのだ。だから普通の美人ではなくて、犯罪の匂いのする美人なのだ。
そういや、ジーウーのバカ野郎もルシルスにイチコロだったな。スカイはトンガリ頭の格闘家シー・ジーウーを思い出しながら言った。
 ラバナは血相を変えて、バゲットの手を引っ張って言った。
「よく見なさいよ父さん!第五パーティ「悪人同盟」のサシシ・ラーキよ。殺しの秘文字教の邪神官だって新聞に出ていたでしょう」
 ラバナがバゲットの腕を引っ張って揺すりながら言った。
バゲットは言った。
「いやあ、良い物を見た。ジャイアントロンで見たより現物の方が美人だ」
 バゲットが涙を流して温泉模様のハンカチで拭いている。
 ラメゲが立ち上がった。そしてルシルスの前に行って片膝を付いて頭を下げた。
ラメゲは頭を下げたまま言った。
「ルシルス様、ボルコ男爵領の領主スパコル・ボルコの長男ラメゲ・ボルコです」
 ルシルスは首を傾げながら両膝に手をついて屈みながら言った。
「え、ボルコと言えばクトイハの。こんな所で同国人に会うとは奇遇ですね。何か御用でしょうか。でも私は今、一文無しなので、お金の相談は駄目です。ダンジョニアン銀行券しか持っていません」
 ラメゲの頭は更に深く下がった。
ラメゲは言った。
 「タビヲンの習わしでは、未婚の貴族の女性とは口を利かないことが掟ですが。コモンのヒマージ王国の外れのトラップシティで、一文無しでいると、この冒険屋達から聞きました。無事に実家まで送り届ける手伝いを申し出ます」
ルシルスは言った。
「はあ、そうですか。それでは、お願いしますラメゲ・ボルコ」
そしてルシルスはスカイを見た。
 ルシルスは言った。
 「あのう、スカイさんハンバーガーの代金を払って下さい。約束じゃないですか。私は、とても、お腹が空いているのですよ。お金が今、沢山在ることは知って居るんですからね」
ルシルスはジト目で言った。
 だが、実はスカイとマグギャランは多額の借金をマイリース村に渡さなくてはならない身であって、そんなに沢山、使える金が在るわけではないのだ。
マグギャランが横目でラメゲを見ながら言った。
「それじゃスカイ。オレ達も何か食べよう。コレから仕事を受けるにしてもルシルスを家に送るにしろエネルギーが必要だ。昨日の夜は抜いているから腹は減っている」
スカイは言った。
「それなら、コロンも来いよ。朝メシだ」
コロンはトロフィーを抱えたままやって来た。そしてカウンターで注文をした。

ルシルスは言った。
「ああっ、美味しいです」
ルシルスは五段ビーフ・マヨネーズ・バーガーを食べていた。これは肉のパテの間にパンが何層も挟まっている15?ぐらいの高さが在る巨大なハンバーガーだ。しかもたっぷりと掛かったマヨネーズが垂れている。ルシルスは、既に立方体に近いピザ・ソースとチーズが中に詰まった巨大なコロッケを、はさんだピザコロッケバーガーを食べ終えていた。
スカイは言った。
「お前、少しはダイエットとか考えろよ。それゼッテー太る組み合わせだよ」
スカイは、ストロベリー味のプロテイン・ドリンクを飲みながら、ケバヴのサンドイッチを食べていた。だが、ルシルスはコロンの横で平然と食べ続けていた。コロンは一番安いハンバーガー一つを少しずつ、かじっては食べていた。
ルシルスは言った。
 「私は、子供の頃から幾ら食べても太った事がないんですよ。ウチの家系は、みんなそうなんです。お姉さまで一人だけ太る人が居ますけど他の、お姉さま達も、私も太ったことは在りません」
 マグギャランはバナナ味のプロテイン・ドリンクを飲み、フィッシュバーガーを食べながら言った。
「その、太る、お姉さんは十代なのかね。これは重要な質問だから正直に答えるように」
ルシルスは飲み込んでからビックリしたような顔をして言った。
 「ええ、そうです。私の一歳、歳上の、お姉様ですから。今は十五歳です」
 マグギャランは下を向いて笑いを浮かべながら言った。
 「ふ、俺には関係ないな」
バゲットが言った。
「まあ、話ながらでも事情を聞いて貰おう」
 ラバナが言った。
「そうよ、あなた達、事情を聞きなさい」
バゲットが言った。
「我が、バゲット商会は、手形を届ける為に交易路ツルッペリン街道をひたすら西に進んでヒマージ王国とミドルン王国の国境の町「懐かしのウタタ」まで行かなくてはならない」
 スカイは言った。
「お前、そりゃ、「懐かしのウタタ」と言えば、ミドルン王国の首都「浮遊都市ウダル」の下に在る、「下ウダル・アラーク」とキーンの大河を挟んであるヒマージ王国の街じゃねぇかよ。確か、ブックリン鉄橋って言う名の五百メートルもある長い橋を渡らないと行き来出来ないはずだ」
 バゲットは言った。
「そうだ、「懐かしのウタタ」にある、モッドゴール商会へと、私とラバナは手形を届けなければならないのだ」
 ラバナは言った。
 「そうよ、届けるのよ」
 マグギャランは言った。
「そうすると、どうなるのだ」
バゲットは言った。
 「企業秘密だ、企業秘密」
ラバナは言った。
 「今は情報化時代なのよ秘密に決まっているでしょ」
 マグギャランは言った。
 「それで、俺達を雇うのか。手形の秘密も明らかにしないで」
 スカイは言った。
 「止めようぜ、バゲットの奴は信用できねぇよ」
 バゲットは言った。
 「お願いだから、私達を護衛して「懐かしのウタタ」まで連れて行ってくれ」
ラメゲが立ちあがってフラつきながら口を押さえて言った。
 「どうも奇妙な話だが、タビヲンに帰るには、ツルッペリン街道を通って、「懐かしのウタタ」を経由した方が日数は短縮できる」