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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「歴女先生教えて~」 第十七話

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「はい、国家が守ってくれないから自分たちで武器を取って悪党と戦うことになったと思います」

「そうね、荘園が出来て、自分で開墾するより実入りの良い大きな荘園に雇われて農民は働くようになったの。荘園は私物だから国家は盗賊から守ってくれない。実際この当時警察権力はガタ落ちしてほとんど国家機能として働いていなかったの。前に話した予算が無いから警備に回せなかったっていう訳。だから農民たちは考えて自分たちで自警団を作った。武器も手に入れて、その組織は小さな勢力からだんだん大きくなり、彼らの中から一族を束ねる代表が現れるのよね。その代表が平氏と源氏になったというわけ」

「なるほど。それでその武士団を荘園主の藤原氏や寺社が雇うのですね」

「そういう事。彼らは確実に戦うプロになっていたから、盗賊などが勝てる相手ではなくなるの。そうなってゆくと彼らも自分たちの努力に見合うものが欲しくなる。後になるけど雇われ武士から独立した武士になることを約束した源頼朝は全国の不満武士たちを味方につけて劣勢だった平家との戦いに勝利し、鎌倉幕府を樹立した。そこには長年の夢であった自分の領地を手にした士族たちの姿があったのよね」

「先生、武士たちは武力もあったし、仲間を増やして勢力も大きくしたのに、藤原一族や天皇家にとって代わろうとはしなかった理由は何ですか?」

「そこが日本の日本人の天皇に対する尊皇精神の高さなのよね。儒教の精神でもあるのよ。神の子孫である天皇に絶対にとって代われない貴族にしても武士にしても、己の立場と言うものを心得ていたのよ。藤原氏は姻戚関係を結ぶことで外戚として政治を牛耳っていたし、平家も後白河上皇の庇護で支配を任されていただけのこと。平将門が桓武平氏(かんむへいし)一族の争いごとに乗じて挙兵して、常陸(ひたち)・下野(しもつけ)・上野(こうずけ)などの国司を追い出し、自ら新皇と称して関東の大半を征服したんだけど、同じ東国の武士の平貞盛(たいらのさだもり)・藤原秀郷(ふじわらのひでさと)らによって討ち取られた。
当時の武士たちの中には、将門という男は畏れ多くも天皇に逆らったうえ、自ら天皇を名乗る(新皇と言った)とんでもない反逆者だ、と信じた者が多かったの。その代表が藤原秀郷だったということ」

「将門は農民が土地を開拓し汗水流して働きながら、その収穫のほとんどを中央政権に搾取されていたことに憤慨して立ち上がった英雄だと言われていますよね?そんな将門を討つなんて、藤原秀郷の方が武士の風上にもおけない人だと考えます」

「高木くんは正義感が強いのね。先生気に入ったわ。当時の日本ではまだまだ中央の朝廷に力があったと言う事ね。恩賞(官位や領地)欲しさに仲間を裏切ったり、全体としての武士の統制はとれてなかったのよ。この時代から200年後に源頼朝が武士を束ねて鎌倉幕府を開いた。そして将門も英雄にされたの」

美穂は高木の観点の良さに感心していた。