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からっ風と、繭の郷の子守唄 121話~125話

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からっ風と、繭の郷の子守唄(121)
「貞園に運は有るのか。生死をかけたドアまでの脱出の道」

 『脱出しなければ・・・」壁を伝い、貞園がカウンターから店内へ出る。
岡本の指示を守り、床に手をつき、四つん這いの体勢をとる。
暗闇に慣れ始めたとは言え、まだ視界は戻ってこない。
『電気を消す前から、片目をつぶっておけ。暗闇に順応するための準備だ」
岡本のアドバイスを実行したが、あまり効果はないようだ。

 入口のドアが、見張りによって開け放たれている。
しかし。場末に近いこのあたりに、大きなビルの光も、明るい街灯もない。
夜の暗さが、ドアの外にひろがっているだけだ。
2mほど暗闇を進んだところで、床に伏せているママと出会う。

 「ママさん大丈夫ですか。怪我はないですか。貞園です。
 常夜灯まで故障したようです。何も見えない、真っ暗闇ですね」

 「あたしゃ大丈夫だよ。そういう貞ちゃんこそ怪我をしていないかい?。
 電気が点くまで動いちゃいけないよ。動くとかえって危険だからね」

 「その通りだ。いいか。誰も動くなよ。
 俺が行って電気を点けてくる。それまで全員、頭を下げて床に伏せていろ。
 カウンターの内側に、照明のスイッチがあるはずだ。
 誰も動くな。物音がしたらすかさずその場に向けて発砲するからな。
 身動きせず、伏せた体勢を保ったまま、電気が点くのを待つんだ」