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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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隣と彼方 探偵奇談9

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ちょっとイラッとするが、まあそうなんだろう、くやしいけれど。それを見透かしたかのように声は嬉しそうに笑う。

「…じゃあ右の糸は、なんでこんな絡まってんの?」

青い糸はひどいありさまだ。こんがらがってたまになり…。こんなのほどけない。切るしかないんじゃないのか、もう。

――たどり着くまで、困難を極めますよ、という意味だよ

どこかで聴いたことのある軽薄な声は、笑いながら続ける。

――絡まって千切れることもある。違う糸を結びなおしている箇所もある。それがあなたの運命

悲惨じゃないか、と瑞は思う。これが俺の運命だって?複雑で、みっともなくて、先が見えない。

――でも、これだけは信じていいよ

声は、ふいに優しくなった。言い聞かせるような柔らかさをもって。

――その複雑怪奇な糸の先。幾多の困難の先、確かに糸の反対側を、その指に結びつけているひとが、いる

「……」

――あなたの糸のその端を持つひとも、あなたに会うため糸を手繰りながら暗い森を歩いているはず