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ゆで卵

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季節は忘れずにやってくる。
同じ日々はないというけど、ボクのそばにいるキミはずっと変わらないような気がする。
季節が巡って もう秋になろうとしているのか…
陽射しが柔らかくなった道をキミと散歩。秋風に乗るようにアキアカネが飛んでいた。
仕事場でもある部屋に戻ってきた。いつもなら浮かんだフレーズを原稿用紙に書き止めるのに言葉が見つからないボクが居る。

キミは、いつものように部屋のフローリングの床の敷物のところに座った。
春に出かけた時に ボクとキミと同時に発したインスピレーションで買うことになった二代目。いつもキミが居た以前の敷物は、ボクがスープを零して汚してしまったのだ。においは消えたけれど、シミは消えなかった。
ボクが、「そろそろそのキミの陣地変えようか?」と勧めてもなかなか買わなかったのに この敷物を見つけた時は、キミが「欲しい」と言ったんだ。
「ボクの部屋なんだし」と言ったが、「にゃん」結局 折半で買うことになった。

部屋の小物が変わっても、仕事場のボクの後ろに居る変わらないキミが、やっぱりいい。
いいんだけど……
さて、この時間をどうするか? 
キミは、ボクが机に向かうと思っているよね。そんなにいつも仕事ばかりしているわけじゃないんだけど、仕事場がリビングだから? リビングが仕事場だから? そうなってしまうのかな。でも、ボクにとっては、お気に入りのスペースなんだ。

キミが、ボクの顔を見つめている。
一応 愛想笑いでもしておこうか…… 
あ、もっと不思議そうな顔でボクを見るキミ。

そうだ。
ボクは、ふとキミとの会話を思い出した。

作品名:ゆで卵 作家名:甜茶