小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

道化師 Part 1

INDEX|8ページ/8ページ|

前のページ
 

「ヒロ、そんなとこに座り込んで何やってんだ?あの子、熱は下がったか?」
動こうとしない俺を跨ぎ部屋に入って行った。
ベットに加納がいないのを知り、玄関に戻ってきた木島は
「あの子はどうした?自分の部屋に帰ったのか?」
「ヒロ、何があった?」
俺は泣いていた。どうする事も出来ずにいる俺に向けたミユキの諦めた哀しい笑みが頭から離れない。
木島はそんな俺を抱きしめてくれるから、泣くことしかできない。
少し落ち着き涙の止まった俺はリビングで温かいココアを飲まされていた。
「ヒロ、何があった?あの子はどうした?」
「連れて行かれた」
「連れて行かれたって、誰か来たのか?」
「違う、連れて行かれたんじゃない。ミユキが自分でついて行ったんだ。俺じゃなくあの男を選んだ」
俺の事が好きだと言いながら、あいつの手を取った。
「なぁ、俺じゃダメなのか?あの男は俺じゃミユキを満足させられないって。あの男はミユキを物みたいに言いやがって」
あの男の言葉が蘇ってきて、ギリギリと音がしそうなほど噛み締める。
「あの男って、兄貴が迎えにここに来たのか?やっぱりお前のこと知っていたんだな」
「随分前から知っていたと言われた。鷺沼さんの事、あの医者かとか言っていたけど、迷惑かけないだろうか?」
あの氷のような目を思い出し不安になってきた。
「魁人なら大丈夫。俺より強かだからな。心配するな、お前、明日は学校行けよ。もう寝ろ」
「寝れない、無理だ」
「久々に疲れさせてやろうか?」
「なっなっ何言ってんだ」
口をパクパクさせ、真っ赤になった俺
「お前も可愛くなったな」
優しく髪をかきあげられ、反論できなくなる。
木島は、後は任せろと言い残すと帰っていった。
ベットに入ったが眠ることなど出来ないまま朝を迎えた。微かにミユキの甘い香りがするような気がして、少しだけ涙が溢れた。
作品名:道化師 Part 1 作家名:友紀