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ゆきうさぎのおくりもの

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さっちゃんが住んでる山は
長い冬の間雪に閉ざされて眠ってしまいます。
暦の上に春が来ても
山にはしっかりと根雪が踏ん張ってるから
さっちゃんの春はまだまだ遠いようです。

そんなさっちゃんの楽しみといえば
ゆきうさぎをたくさん作っておしゃべりすることでした。

「新しい雪は真っ白でサラサラしてる♪」

昨日降り積もったばかりの雪を手のひらに包んで固めながら
最後にナンテンの実で赤いお目目をつけてあげました。

「聞いて♪ あしたはあたしのお誕生日なんだよ。」

そういいながら鼻をこすり付けたら
生まれたばかりのゆきうさぎが
さっちゃんを見上げてこういいました。

「プレゼントは何がいいの?」

さっちゃんはキョトンとしています。
だってまさか雪で作っただけのうさぎが
おしゃべりするはずがないって思ったから。

空耳かしらと思いながらも
さっちゃんはゆきうさぎを相手に
いつもの独り言を始めました。

雪に閉ざされた山には仕事がなくて
さっちゃんのおとうさんは
おかあさんとさっちゃんを残して町に出稼ぎに出かけます。

長い長い冬のおかげで
さっちゃんはおかあさんとふたりきりの
淋しい日々を送らないといけないのです。

「早く雪が溶けて春がこないかなぁ。
 出稼ぎに行ったおとうさんが帰ってくるんだ。」

また雪を降らせそうな空を見上げて
さっちゃんがゆきうさぎに話かけたときに
またかすかなささやきが聞こえました。

「プレゼントは何がいいの?」

今度はナンテンの赤い実でできた
ゆきうさぎの目と視線が合いました。
おどろいたさっちゃんにゆきうさぎはこう続けます。

「僕らはさっちゃから生まれてきたんだから
 なにかさっちゃんにプレゼントしてあげようって
 みんなで話し合っていたんだよ。」

「それならおとうさんがいい!」
嬉しさのあまりにさっちゃんは白い息をはずませて
両手でゆきうさぎを掲げた拍子に勢いあまって落としそうになって
慌てて胸に抱きかかえたのでした。

暖かくならないとさっちゃんのおとうさんは帰ってこれません。
なのでさっちゃんのお誕生日はいつもおかあさんとふたりで
3人で過ごした記憶がないのが少しだけ不満だったのです。

一瞬ゆきうさぎの目が困ったように揺れたのだけど
すぐに「任せて♪」と、どこかに消えて行ってしまいました。
作品名:ゆきうさぎのおくりもの 作家名:遊花