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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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ストレス自販機でお金持ち!

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「なになに……? ストレス自販機?」

自販機の中には缶ジュースではなく、
さまざまなサイズのチケットが入っていた。
まるで食券販売機だ。

「ストレスを販売しているのか? 意味わかんねぇな」

といいつつも、この手の意味わからないもの系は
つい好奇心で手を出してしまう性格。

でも、お金を入れる場所がない。

「どこに入れるんだ? くそっ」

先に自販機のボタンを押すと、
まだお金を入れていないのに自販機からチケットが出てきた。


『佐藤幸雄さま ストレス100円分』


チケットにはそう書いてある。
チケットの裏は小切手になっていて、ちょうど100円ぶ――


ぴちゃっ。

「うわっ!? 汚ね!! 鳥のフン!?」

肩に鳥の糞が落ちて来た。最悪だ。
怒りのあまり石を取りに向かって投げたが、当たらない。

残ったのはムカムカと湧き上がるストレスだけだった。

「はっ! そうか! このストレス自販機は
 お金を渡すかわりにストレスを与えるんだな!!」

俺の鳥のフン事件は100円レベルのストレス。
それにしては少し額が数ない気もするけど……。

自販機にはほかにもさまざまなストレスがある。

100円ストレス。
1000円ストレス
10000円ストレス
 ・
 ・
100万円ストレス

「100万か……どれくらいなんだろうな」

いきなりは怖かったので、一段したの「10万ストレス」を受けてみることに。
10万ストレスのボタンを押すとチケットが出てきた。

チケットを握った瞬間。

俺の後ろに大きなワゴン車が止まり、すぐさま拉致された。
目を覚ましたのはどこかの倉庫で椅子に縛り付けられている。

「いい加減はいたらどうなんだ? ええ?」

屈強な男たちがゲスな顔をしてこちらを見ている。

「ちょ、ちょっと待ってくれ! 俺がなにをしたっていうんだ!」

「しらばっくれるんじゃねぇ!! 遺産を隠しただろう!!」

「知らないよ! 遺産なんて知らない!
 あんたたちが出れなのかもしらないんだから!!」

「うそをつけ!! 目がウソだといっている!」

「ホントなんだって!! 信じてくれよぉ!!」

こんなにもストレスがかかるなんて。
自分の言葉を信じてもらえないストレス。
自分が置かれたこの極限状態でのストレス。

これが10万のストレスか……!? やりすぎだろ。


3日間、進展しない会話と続けられる尋問に耐え続けた。

その後「人違いだったわ」と雑に解放されたことで、
さらに徒労感というストレスが襲い掛かった。

「こ、これが10万円……」

100万なんてとても耐えられない。
いったいどんなストレスを与えられるんだろう。

もう想像しただけでも恐ろしい。


「いや待てよ……」


拷問によって極限まで地獄へと追い詰められた俺は、
倫理やモラルの壁を超越した恐怖の方法を思いついた。

 ・
 ・
 ・

「で、これのボタンを押せばいいんだね」

「ああ、そうだ」

友達を自販機の前に立たせる。
そしてボタンを押してチケットは俺のもの。

名付けて「横取り作戦」。
名づけるまでもなかった。

「100万円分っと……」

チケットが自販機から出た瞬間、俺はチケットを持って逃走。
これ以上賢い方法はないだろう。

「あはははは!! 100万円ゲットだ――!!」

友達の方には一度も振り向かなかった。
そして、手に入れた100万円の使い道に悩む。

「美味しいグルメもいいな。旅行もいいなぁ。
 そうだ! 全部入れてしまおう! クルージングだ!!」

超豪華客船へ宿泊する予約を入れて話を進めていった。
そして、窓口の人はにこりと笑った。

「では、代金をお渡し下さい」

「はい」

チケットを出す手が震えていた。
理由は自分でもわかる。

それは置いてきた友達のことだ。

今もストレスで苦しんでいる友達を犠牲にして、
俺は今から豪華客船で旅行をしにいくだと?


ふざけてる。
そんなの楽しめるわけない。

金を使うたびに苦しんでる友の顔が浮かぶ。

「だ、だめだ!! この金は使えない!!」


慌てて自販機のもとへと戻るが、そこにはもう誰もいない。
何かしらの恐ろしいストレスイベントに遭遇しに違いない。

そう、もう俺は二度とともに謝ることができなくなった。

それを思うと罪悪感と情けなさが一気に心に押し寄せた。

「うああああん! ぜんぶ俺のせいだ!!
 俺が騙してボタンを押させたからだぁぁぁ……」

二度と謝ることができない。
一生俺はこの罪悪感を感じながら生き続けなければならない。

これ以上のストレスはあるだろうか。


ベーーッ。


「……あれ?」

まだ何もボタンを押してない自販機からチケットができていた。


『佐藤幸雄さま ストレス50万円分』


チケットには確かに俺の名前と、裏には小切手。
いままでとは完全に順序が逆のパターン。

「そうか!! お金を先に受け取ればストレスが、
 ストレスを先に受け取ればお金にしてもらえるんだ!!」

俺の感じ続けた罪悪感は消えることない。
さながら50万相当のストレスをこれで受けたんだ。


目先の金に友を売った自分を後悔しながら今後を過ごそう。







「あれ? なにしてんの?」

100万スイッチを押した友達がやってきた。
辛い顔どころか涼しい、いや幸せな顔になっている。

「な、ど、どうして!? ストレスを受けたんじゃないのか!?」

友達は俺の問いかけに答えた。

「僕にもわけがわからないよ。
 ただ、100万円のストレスとして"結婚"することになったんだ。
 これだけでいいなんて楽なものだね」


その後、結婚した友達がみるみる疲弊していったことで
俺は100万円のストレスの恐ろしさを痛感した。