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てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
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「時のいたずら」 第一話

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ちょっとしたいざこざから職を失ってしまった優斗はハローワークに何度も足を運んでいたが不景気なのか年齢的に30を超えているからなのか採用が決まらなかった。
実家から出て一人暮らしを初めていたので預金を使い果たすと経済的にやって行けなくなる懸念が目の前にあった。

「どこでもいいから仕事決めないと。この次に紹介を受けたところへは何が何でもお願いしてみよう」

そんな気持ちでいたところに舞い込んできた就職話に、なんの迷いもなく二つ返事でお願いをしてしまった。
あんなことになろうとはこの時夢にも思わなかったからである。

採用を決める面接会場で順番を待っていた優斗は、言いつけられたようにスマホの電源をマナーモードにして時間が来て中に入った。

「杉村優斗さんですね?」

「はい、杉村です」

「お座りください」

「はい」

「先にお渡しした資料に目を通して戴いていますよね?」

「はい、読ませて頂きました」

幾つかの質問を受けて優斗は登録をして派遣として警備会社に就職が決まった。
しばらくして美術館の警備員として名古屋市内にある山川美術館への勤務を命じられた。
由緒ある展示物を誇る山川美術館では最近変な噂話が聞こえていた。
その事を優斗は知らない。

GWから開催される国宝源氏物語絵巻の展示に増強された警備員の一人として勤務する。開催前日警備員室に全員集められて館長から不祥事が無いように細かく注意事項を伝えられ、24時間体制で臨むことも追加された。

その日夜勤を命じられた優斗はもう一人のベテラン警備員島村から注意事項と併せて奇妙な噂話を吹き込まれた。

「優斗くん、これはもう何年も前から聞いている話なんだけど、源氏物語絵巻の展示会になると必ず一人か二人幽霊を見るんだ」

「えっ?幽霊?まさか、島村さん脅しっこなしですよ」

「新人だからと言って怖がらせているんじゃないよ。俺はたまたま夜勤じゃなかったから聞いた話になるんだけど、前日の深夜に女性の幽霊を見たと歴代の警備員が報告しているんだよ」

「でもそれなら何故先ほど館長さんはその話をしなかったのでしょう?」