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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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通り過ぎた人々 探偵奇談5

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神様



久しぶりの休日だ。夏休みだから毎日休日のはずなのだが、補講に部活にと忙しい日々だったので、郁(いく)は解放された気持ちでいっぱいだった。

親友の美波と一緒にショッピングモールで買い物をして回った。盆明けから本格的に部活と補講が再開する。バスケ部の美波も同様らしく、遊ぶなら今日しかないと二人して繰り出してきたのだ。

「なんかさ、夏らしいことひとつもしないで終わっちゃったな~」

フードコートでドーナツを頬張りながら、郁はそう零した。

「夏と言えばこう…海、山、ひと夏のアヤマチ!みたいな?そんなの皆無だったもん」

ふーん、とクールに返してくる美波。アイスコーヒーをストローでかき混ぜながら、うらやましいくらい長いまつげをぱちぱちさせる。

「アヤマチなかったのかよ。合宿やら部活やらで須丸(すまる)と仲良くしてたんでしょ?」
「ないよそんなの。あたしは未だ、宮川主将へのときめきでいっぱいなんだから!」

瑞(みず)は部活の仲間で友だちだ。アヤマチなんてまず起きない。郁の思いは引退してからも、宮川へ向かう一方だ。時折練習を覗きに来てくれるが、あくまで引退した身、あとのことは後輩に任せているようで、現役時代の厳しさはあまりなく、優しくとっつきやすくなった。それが郁にはもうたまらないのだった。

「夏が終わっちゃう~」
「部活で充実してたなら別にいいじゃん」
「でもさー…」

郁がこの夏したことといえば。
部活、部活、怪奇事件の調査、生霊退治、部活、部活&部活…。

(やばい…これでいいのかあたしの青春!)

なんだかとてつもない危機感に襲われる郁だった。