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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「父親譲り」 第十一話

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「まあ、素敵な格好ね。よく半年でここまで痩せたね。やる気があると女は変われるっていう事ね」

「頑張った分良いことがあると嬉しいです」

「可愛いわね。そういうところが。きっとあるわよ。
もちろん勝負下着よね?」

「ええ、黒です」

「私もそうよ」

「同じですね。今日は楽しみです」

先に相手から熱心に誘われていたのは沙代子の方だった。妻を病気で亡くした同年の男性に「似ているから」と言う理由で強く迫られたのだった。
それは嘘でも沙代子には嬉しく感じられたので連絡先を交換して別れた。
美津子は迷っていた。
リッチそうな40歳の実業家と、同じ年の見た目誠実そうなサラリーマンのどちらにするかでだった。

母の言葉通り経済的に優れているだろう理由と、沙代子の言った中肉中背で筋肉質という理由で40歳の男性に決めた。連絡先を交換して後日会おうと約束した。

「美津子さんの彼、お金持ちそうね」

「うん、それで選んだんじゃないけど、中肉中背で筋肉質と言う条件はクリアーしてたからいいのかなあ~って思いました」

「そっちで選んだのね。もうやる気満々じゃない?」

「ええ?そんな風に見えますか?ハハハ~」

「私も同じ。見てくれ良くないけど、死んだ奥さんにそっくりだと言われて、情にほだされたの」

「あら、珍しいこと。本気になってません?ひょっとして」

「それは・・・解らないわ」

「私に言っていることと違うじゃないですか。でも沙代子さんが好きになることは応援しますけど」

「まだそこまでは。案外そう言う人はだらしなかったりするから気を付けないとね」

「未練がましいっていうのは男らしくないですよね?」

「そうね。前を向いて生きている人じゃないと、後で後悔する。そこのところは会って話して見極めるつもり」

「あっちの相性も大切ですからね、違いました?」

「違わないよ」

美津子の積極的な変わり様に少し驚かされている沙代子ではあったが、この後約束した男性と本気の恋に落ちて行く。

美津子が約束した実業家の男性と会ったのは、パーティーが終わってから二週間ほど後になってのことだった。

「遅くなってごめんなさい。今度の日曜に駅前のロータリーで車停めて待っています。10時に来てください」

ラインにはそうメッセージが残されていた。

「ありがとうございます。遅れないように行きますのでよろしくお願いします」

と返信した。
彼はメルセデスのクーペに乗っていた。初めて外車の助手席に座る。シートが硬い印象を受けた。