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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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世界から色が失われたら?

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なんの前触れもなく世界から色が失われた。

太陽の光も、空も、虹もなにもかもが白黒に。
世界はモノトーンとなってしまった。

「これじゃ私の美白が意味ないじゃない!」
「せっかく髪をカラーリングしたのに……」
「どの服も全部白黒になっちゃったわ!」

色が失われ世界は大混乱。

なにが原因なのか科学者たちは研究するも
やっとこさひりだした結論が

"たぶん神を怒らせた"

という、科学者にあるまじきものだった。


「神のお怒りを鎮めればきっと色を返してくれるわ!」

そんなわけで人々は一致団結して
神様のご機嫌取りをするようになった。

お供えはもちろん、毎日教会に出向いては
神様の武勇伝を褒めちぎってのヨイショ大作戦。

そんなもの効果がまるでなかったことを気付くのに
かなりの時間が経った。

「色を返してくれないわ。
 もしかして、神様は別のことでお怒りなのかも……」

人々はふと自分たちに目を向けてみた。

世界ではまだ争いが絶えず行われて、
天におわす神様から見たらどう見えるだろうか。

"こいつら学習しねぇなぁ……"

と、飲み屋でのケンカでも見るような冷めた目で
人間たちの愚かな行いを眺めているに違いない。


「そうよ! きっと世界が白黒になったのも
 神様が与えてくれたチャンスなのよ!
 みんなの気持ちを一つにする機会なのよ!」

色のなくなった世界で
だらだらと続けていた争いをやめることに世界は動き出した。

やってみると意外に簡単なもので、
世界の争いが減るにつれてスポーツも盛んになっていった。


そして、気が付けば世界から争いは根絶され
みんなスポーツをはじめとする平和な世界へとなっていた。

「がんばれー! どっちもがんばれー!」

色がない世界なので
ユニフォームの区別もつきにくく
戦いの場というよりも振興の場所へと化していた。


結果的に、世界は色を奪われたことで平和へと変わっていった。


いつしか色がないことも当たり前になった頃、
神はすっかり仲良くなった地上を見て安心した。

「うむうむ、仲良くやっているようじゃな。
 そろそろ色を返してやってもいいじゃろう」

神様は平和な世界に色を返してあげた。


その瞬間、

「お前、その肌の色はなんだ!!」
「その髪色は日本代表としてふさわしくない!」
「どうしてその色の服を合わせるの!? ダサすぎる!」

些細な違いにケチをつけあって、
世界は一気に争いはじめた。


「こいつら学習しねぇなぁ……」

神様はめんどくさくなり、どこかへ行ってしまった。