お蔵出し短編集
邂逅
目を開けると、そこは高校の校庭だった。
僕は鉄棒に背をもたれている。
一瞬の戸惑いが僕を支配した。
「もしも、透と同じ大学に行けたら」
僕の隣で真由美がそんなことを言う。
詰め襟の学生服に身を包み、僕は完全に高校生だった。
くるりと真由美が身を翻して僕の前に向き直る。
「こっそり、同棲しちゃおっか」
真由美はそんなことを言って、少しいたずらぽく笑った。
ふと、辺りを見渡す。
懐かしい光景が広がる。
見覚えのある世界、見覚えのある風景。
でもよく見れば遠くが霞んでいる。
もやがかかるように、曖昧に世界がぼやかされている。
「・・・どうしたの？」
真由美が不安そうな顔をして僕を見た。
僕は反射的に笑顔を作って、真由美を見つめ返した。
ここは、まさか、いいや、きっと、そうだ。
僕は自分がいる世界を、半ば本能的な直感で理解した。
ここは、真由美の世界だ。
真由美の心の世界なのだ。