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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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眠りの庭 探偵奇談2

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真夜中の街を、自転車を飛ばして学校へ向かう。生ぬるい風がすぎる夜の街は、殆ど光が落ちて静まり返っている。シャッターの閉まった商店街を過ぎ、山際を目指す。信号が明滅する道路を横切り、坂道を登っていく。

辿り着いた校門は閉まっている。しかし弓道場のある運動場の隅から、中に入るのは容易だった。自転車を道路の隅にとめ、瑞は敷地内に入る。月明かりのおかげで視界は良好だ。

目指すのは、工事中の中庭だ。真夜中の二時に工事関係者はいないだろうが、瑞は慎重に進む。運動場をすぎ、校舎の周囲を歩いて中庭に辿り着いた。

棟と棟の間にある中庭。といっても広い草むらに、古ぼけたベンチが数台あるだけだった。そこに芝生を入れ、生徒たちの憩いの場としようと学校側。いまは重機が沈黙しておかれており、土がところどころめくられていた。

「俺を呼んでるのはきみか」

中庭の奥の奥。草むらに隠れた場所に、小さな祠がある。瑞はそこへ近づいた。
朽ちた祠だった。石で出来た祠で、ところどころ欠けている。しめ縄もぼろぼろで、こんなところに祠があるなんて、生徒たちはきっと知らないだろう。



あれは工事が始まる二週間くらい前だったか。昼休み、購買へ行くためにここを通りかかったときに見たのだ。

晴れ渡った日。中庭には数名の生徒が集まっていた。地べたに座ってギターを弾いている二人組。バスケットボールをついて遊ぶ生徒ら。ベンチでスマホを見せあい、笑いあう女子生徒のグループ。

その中に、瑞は不思議なものを見た。

少し離れた場所。草が伸びて生徒たちが立ち入らない庭の隅に、子どもが立っていたのだ。
白い髪をした4、5歳くらいの少女だ。作務衣というのか、紺色の和装姿だった。痩せている。その少女が、優しい目をして、生徒らを見てにこにこ笑っていた。

おや、と不思議に思っていると、白髪の少女と目が合った。瑞の姿に気づくと、彼女はすっと消えてしまったのだった。