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コスモス2015

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「写真撮ってこよう」と夕紀はバッグからスマホを取り出して立ち上がり、オレもカメラを取り出して、内緒で夕紀の横顔を撮った。今年のコスモスに合わせたような地味で力強さを感じさせる顔を。

かつてケンカをした後に、まだ収まりきれないオレのそばにきて、憮然とした口角を指で押し上げて笑い顔にしようとしていたのを思い出した。まったく予想もしていないことだったのでオレは笑ってしまった。あんな風に簡単に笑顔になれたのに。時は……いやオレが信頼を壊してしまったのだ。築くのは時間がかかる信頼も壊すのは簡単だ。

夕紀が立て札を見ている側に行く。丈の短い品種で、雨や風にも倒れにくいという。台風の多い季節に生育するのだから納得出来る面もあるが、それでも去年の華やかなイメージが残っているので、寂しさは拭えない。

「品種が変わってしまったんだ。去年はもっと華やかだったのに」と言うと、夕紀は「そう、誰ときたの?」と訊いた。独りだよと答えるオレの言葉をふーんと聞き流し、夕紀は屈んでコスモスの写真を撮りだした。その仕草が少し老人っぽく見えてオレは哀しさと申し訳ない気持ちを感じた。

  丘一面に咲くコスモスは
  品種が変わっていた
  それで あなたと一緒に
  近寄ってよく見たのです
  地味だけれど力強く見えた
  でもやはり寂しいのです


丘の下に向かい歩いていると、「あ、ソフトクリームがある」と、歩みを速めた夕紀。オレはなんだか子供を連れた父親のような気分になり、微笑みながら後を追った。

ベンチに二人座ってソフトクリームを食べる。並んだ腰のあたりに夕紀の体温を感じて、無くした落とし物が帰ってきたような気分だった。横を見ると夕紀は丘のコスモスとその上空を見ている。青い空、あれほど残念に思っていたコスモスの花が綺麗に見えた。そして青空はコスモスを引き立てる名脇役だと思った。オレの口角も夕紀に上げてもらわなくても自然に上がっている。

  丘一面に咲くコスモスの
  向こうに青空が見えた
  あなたの表情も晴れて
  それで私も嬉しかったので
  もう一度コスモスを見たら
  綺麗な花に見えたのです
作品名:コスモス2015 作家名:伊達梁川