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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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気持ちのままに

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梅雨の晴れ間



庭の仕切りを木製の柵にすることにした。ホームセンターに依頼すると、60歳を過ぎた大工が来た。仕切りの長さは10メートルほどである。1メートルに8枚ほどの板が必要となる。
防腐剤や白いペンキを塗るので2日はかかると思った。
調度土曜日に来てくれたので、わたしは休みであった。
10時になり、お茶を妻が用意した。
スイカも出した。
「初物です.頂きます。美味い。美味い」
大工は本当に美味そうに食べた。
話を聞き始めると、大工は独身であった。10年前に離婚したそうだ。
「昼飯は持って来たのですか」
「カップラーメンを」
わたしは「えっ」と声を出してしまった。
大工の仕事は肉体労働である。それにこの暑さである。
「何か用意しますよ。好きなものがあれば」
「でしたら鰻など」
わたしはまた「えっ」と言いそうになった。
鰻は並でも2000円している。かつ丼なら800円である。
ここでケチって雑な仕上げをされては困るので
「鰻用意しましょう」
と言った。
昼になり妻とわたしと大工の3人で鰻を食べた。
「生き返る様です」
大工はそんな礼の言葉を言った。
お世辞にしても嬉しい言葉であった。
所が仕事はなかなかはかどらない。
板を切って、等間隔に杭を打っただけであった。
翌日も弁当の事を妻が訊ねると
「昨日のカップラーメンがあります」
と言った。
「今日は何が良いでしょうか」
「ピザも美味そうですね」
と言った。
昼飯は宅配のピザになった。
今日は完成すると思った柵であったが、ペンキ塗りが残った。
ホームセンターに18万円支払ったので代金は構わないのだが、明日からは妻1人になるのだ。
妻は知らない人との会話が苦手なのである。
それに「ここはこうしますか」
等と大工に訊かれた所で返事に困ってしまうのだ。
月曜日は雨であった。大工は休むと電話がホームセンターから入った。
未完成な柵に雨が降り注いでいた。
柵のなかのアジサイは色鮮やかに見えた。
「これでワンちゃんにいたずらされないわね」
妻がアジサイの花に言っていた。
茶々(トイプードル)がワンと吠えた。
妻はおやつを与えた。
ふとその定価がわたしの目に入った。
320円。カップラーメンよりも高い。
今度が最後になるだろう大工に昼飯は奮発して鰻にしようと思っていた。
オレンジ色の花。ノウゼンカズラが雨に打たれていた。
この花は暑い晴れた日が似合うように思うのだった。

作品名:気持ちのままに 作家名:吉葉ひろし