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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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慟哭の箱 8

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深夜を回って家に戻ると、予想通り旭は起きていた。旭ではなく、真尋だったが。彼はいつもみたいにだるそうにソファーに腰掛けていたが、清瀬を見る瞳にはいつにない緊張の色がにじんでいる。

「…芽衣のところに行ってたの?」
「ああ」

そう、と呟き真尋は身体を起こして座りなおした。その向かいに座り、清瀬は真尋を見る。

「痛かったと思うよ、涼太も一弥も」
「……」
「須賀の両親はね、賢い跡継ぎが欲しかった。でも旭は、自己肯定感の低いおどおどした子どもで、両親は失望してつらくあたってたな。堂々としろ、めそめそするなって。かわいそうだったよ。躾と称して叩かれたし、蹴られたし、ご飯をもらえないこともあった」

遠い場所を見るように細められる瞳を見つめながら、清瀬は芽衣の話を思い出す。彼が養子に迎えられた二年後、仲の悪かった父親と弟が和解し、旭が跡を継ぐ必要がなくなったという。それから旭は急速に存在意義を失っていったのだと。

「武長正二郎(たけながしょうじろう)という男は、いまどうしてる?」

尋ねる。唐突な質問だったにも関わらず、真尋は顔色一つ変えずに嘆息してみせた。

「なに?今更あいつを逮捕でもしてくれるのかな?」
「…逮捕ですめばいいが、一弥はそんなことで満足しないんだろう?」

武長正二郎。
おそらく、旭が両親の通夜で会った「顔が真っ黒に塗りつぶされた男」というのは、こいつだ。

「須賀夫妻は数年前、会社の経営が傾きかけた際、この男にずいぶん資金の工面をしてもらったそうだな。武長というのは取引先の人間であったが、プライべートでも親交があったとか」

芽衣から得た情報を思い出す。須賀夫妻はその工面のおかげで経営難を逃れている。そしてその後も、その援助は続いていった。

作品名:慟哭の箱 8 作家名:ひなた眞白