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きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
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金魚さんとの出会い。

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私が欲しいのは二~三センチほどの赤ちゃんランチュウが欲しいのだ。
どの店に行っても十センチ前後はあるランチュウばかりだった。
それはいらないのだ。
どうしたもんかと日々考えていたら、旦那(彼氏)が、
『ランチュウの赤ちゃんは一旦置いておいて、水の立ち上げ用に金魚を選ぼう。』
と言い出した。
私は仕方なくそこは承諾した。
そしてお近くの金魚屋さんに行って、たくさんいる中からどの種類にするか…、何色にするか…大きさはどのくらいか…などを考えながら長いこと選んでいた。
長いと言っても二十分ほどだったと思う。
どうせランチュウはないのだから…と思い、一匹を選んだ。
しかし旦那が、
『そんなに小さいのならもう一匹必要かも…。』
と言って来た。
胴体だけで三センチあるかないかくらいだった。
そう言うのなら…と、最初の一匹は私が選んだので、もう一匹は旦那に選んでもらった。
そして家に持ち帰り、水合わせを始めた。
袋に入った金魚二匹は水面近くをプカプカと漂わされている。
そんな金魚さんをガラス越しに見つめながら、欲しい金魚じゃないのに…と私はふてくされていた。
そして見ていると、あれっ?!デジャブ?!と私の脳裏を過(よぎ)った。
どういうことだろうかと金魚を凝視して、頭の中の何かとその疑問が一致する部分を探した。
“この金魚見たことがある…。何処でだ?!”
と私はその記憶の映像を繰り返し繰り返し再生した。
『あーーーっ!!思い出したーーーっ!!上が前に見せた金魚さんだーーーっ!!でもちゃんと見えていたのは…全身オレンジの方だったけど…、見えたり消えたりしてた金魚はこいつかーーーっ!!』
琉金が欲しかった訳ではないけど、水の立ち上げのためと思い、ランチュウはまたその内見つけようと思って、選んだ金魚は欲しいと思っていなかったあの二匹とは…。
しかもお店で選んでいた時には気付かずで、家に帰って気が付いた…。
琉金だった…。
上にしてやられた~。
しかも私が選んだのは、白い三角模様のある金魚だった…。
これはデジャブ…じゃないな…。
でも欲しくなかったのにーーー、負けた感がハンパなかった…。
そして旦那が選んだのは、最初に見えていた全身オレンジの金魚だった。
このことは旦那には言っていなかったと思う…たぶん…。
でも、オレンジの金魚はたくさんいるから、これはたまたまだと思っておこう。
うん、それが良いと思う。

そして、水合わせをして、いざ水槽へ。
最初は二匹とも戸惑っているようにも感じたけど、だんだんと慣れて行った。
白い模様のある方は静かなようで、じっとしている。
オレンジは水槽を泳いでは、白模様の金魚の所へと帰って来る。
そして不思議なことに、ほっぺたをくっつけるように白模様の隣へと静かに止まる。
寝る時も顔をくっつけるようにして眠る。
それでも水の流れがあるので、それは次第に離れて行く。
ふとオレンジが目を覚ましたのだろうか、気付くと白模様から自分が離れていると思ったのだろうか、慌てて白模様の隣に泳いでいきくっついて背びれを倒し寝る。
初めて金魚を飼ったから、何も知らずにこれが金魚の習性なのかと思った。
仲睦まじい姿を見て、人はいろいろ考えさせられる。

でも私はランチュウを諦めてはいなかった。
幅六十センチの水槽だからまだ飼っても良いだろうと思う私はランチュウを求め続けた。

二匹の金魚が来て一週間ほど経った。
白模様の金魚は餌を食べなくなった。
オレンジ自身は、自分は餌を食べながら白模様に寄り添い続ける。
そして二~三日後に白模様は死んでしまった。
水合わせのために買った金魚だけど、やっぱり死んでしまうと悲しいもので、私は涙を流した。
河川敷に埋めに行こうとその金魚をティッシュにくるみ泣きながら向かった。
十センチほどの穴を掘り埋めた。
食べる魚は平気で捌(さば)きゴミ箱に捨てる。
なのに愛着・愛情が生まれれば涙まで流して埋葬する。
人間のエゴなのかそれとも愛着や愛情というものがエゴを作るのか…またいろいろ考えさせられた。
私が選んだ方が死んでしまい、最初に見えていた全身オレンジが生き残った。
旦那が適当に選んだ方が生き残った。
そして倍ほどのサイズになって今もしっかりと生きている。

私は近所の金魚屋さんにランチュウが入っていないかを探しに行った。
自転車を立ち漕ぎしながら、季節の風を感じていた。
その時、私の顔の横より前に迫(せ)り出している何かが目に?!入った。
何だこれはと私はそっちを向いたら、四十~五十センチの御使い(みつかい)だった。
驚いた私は慌ててしまいハンドルが左右にぐらつき、ブレーキをかけて止まった。
『危ね~よ!!』
咄嗟過ぎて、私はついつい声を出してしまった。
だからと言って御使いは喋れないし目もないし耳も聞こえないのだ。
石膏のようなもので作られた顔があるだけだからどうしようもない。
キリストの言うことは聞いても私の言うことは聞かないようだ。
そして気付いた。
御使いは顔の横左右に一匹ずついる。
どうやら二匹で一対のようだ。
まっ、それが仕事ならこっちが口出し出来るわけもなく…。

それからランチュウを探して数ヶ月…、ついに出会った。
二センチくらいの薄オレンジのランチュウだった。

最初の金魚と仲良くなればいいなぁと…、でも白模様にあんなにべったりだったから大丈夫だろうと高をくくっていた。
そして最初の日から、まぁ~追いかける追いかける。
琉金が追いかける…。
直径十センチの円を描くように、くるくる追いかける。
でも、それも餌の時間だけ…。

そんな金魚を見ていたら何かが見えて来た。
“金魚の顔に向かい合ってくっつくように何かが一匹いる…。御使い…?!でも一匹…。”
そう思うと、上が、
“全て生きている生き物には、御使いがいるということが分かりましたね。哺乳類・植物・魚類…。関係なく御使いがいてそこに全てキリストが手を差し伸べているんですね。”
と言った。
キリストって大変な仕事をしてるんだなぁと思う私は、
“偉いっ!!頑張れっ!!。”
とキリストに伝えた。
キリストは微笑んで会釈するとそのまま仕事を続けた。

そしてそんな琉金もおっちょこちょい?!のようで、水槽の中に入れてある水草に刺さってしまった。
しっかり縦向きに…。
どうしたもんかと考える。
レスキュー隊を出動させるか…、自分の力で頑張らせるか…。
その姿をしばし見ていた。
…何かに似ている…。
誰かに似ている…。
水草に刺さっているにも関わらず意地でも泳ごうとする。
近くのビンが少しずつ動くほどの無理やり感で泳ごうとする。
それを見てやっぱり何かに似ている…。
…リップ?!と私は首を傾げた。
まさかね~、そんなことあるはずもなく…。
上が言っていた言葉を思い出した。
“もう少ししたら誕生日…。”
と言っていた。
もしかして誕生日プレゼント?!…と私は考えた。
そんなことを考えていたら上がニヤニヤしながらそっと出て来た。