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33粒のやまぶどう  (短編物語集)

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 腰から上の姿をいきなり見せた郁子が「一緒に遊ぼうよ」と誘ってくる。だが洋一は、50年ぶりの対面だというのに、妙なことを考えてしまう。
「このまま郁子をこちらへと引っ張り出せば、50年前のあの場の郁子はいなくなる。ということは、郁子は50年前の3月3日に取り残されてるのではなく、現在の俺が、つまり当時から考えて、未来の俺が、ここで郁子を引き抜いてしまう、そのことから……、神隠しが起こったのかも知れないなあ」

 こんなメカニズムに気付いた洋一はさらに考えを巡らす。
「もし今の俺が、郁子をこちらへと引き抜かず、そっと元へと戻せば、50年前に郁子は消えずにいられる。そして普通通りに暮らして行けるはず。ということは、家族の今までの過去は、これで変えられるかも知れない、いや、きっと変更できる」と。

 洋一は覚悟を決めた。現在へと半分姿を現す郁子を引き抜かず、元の50年前へと押し込めた。そして、ふうと大きく息を吐いた。

 その時だった、襖がスーと開く。これに洋一が振り返ると……、そこに佇(たたず)んでいた。
「お兄さん、私も実家に帰って来たわ。お母さんが大事にしていたお雛さん、3年振りに飾ってくれた?」

 もうすぐ還暦を迎えるという……、ちょっと太めの郁子が微笑んで、こんなことを訊いてきたのだった。