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33粒のやまぶどう  (短編物語集)

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 こんな情景を目にした凛太郎、そう言えば、かって日本海側の小さな町で暮らしたことがある。

 冬はいつも豪雪だった。
 子供たちの通学に間に合うように、朝早くからの雪かき。さらに昼間は生活道路の確保。これらはすべて麻伊の役目だった。
 そして凛太郎は工場へ早朝出勤し雪かき。夜遅くまでの会議後、帰宅してくると、雪の重みで襖が開かない。仕方なく真夜中から屋根の雪下ろし。まさしくあの当時──雪との格闘の日々だった。
 凛太郎は降りしきる雪に、冷えた指先をダウンジャケットの袖の中へ縮込ませ、こんなことをふと思い出した。

 それにしても面白いものだ。麻伊と知り合った頃、麻伊は雪が降ったといつもはしゃいでいた。だが、あの雪国の暮らし以降、大層雪嫌いになったようだ。

 凛太郎は新しい足跡を残しながら、ふふと笑みを零してしまう。そして滑り転ばないように重心を落とし、家へと戻った。
 雨戸をガラガラと開ける。どうも近所は未だ閉まったまま。みなさんこの寒さに引きこもっているのだろう。
 それにしても随分と積もったものだ。南天の赤い実が雪に埋もれ、2、3粒しか確認できない。梅はといえば、枝は垂れ下がり、今にも折れそうだ。このまま春となり、果たして薄紅の花を咲かせてくれるだろうか? ちょっと心配だ。