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33粒のやまぶどう  (短編物語集)

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 こんな麻伊に背を向けて、凛太郎はキッチンへと向かう。冷凍庫から薄切りトーストを2枚取り出し、オーブン・レンジへと放り込む。それから野菜室のレタス、そこからは3枚の葉をはぎ取り、水洗いする。そして湯沸かしポットに溢れるほどの水を注ぎ入れ、スイッチ・オン。

 しばらく待って、カリカリに焼き上がったトーストにハムとレタスを無造作に挟み、マグカップにポタージュ・スープの粉を入れ、沸騰した湯を注ぐ。あとはツナ缶開けようか、それともチーズでも囓ろうか?
 ちょっと迷うが、今朝は少し味を変えて、48秒の絶妙なチンで、小鉢目玉焼きでも作ろうか?

 単身赴任が長かった凛太郎、この目覚めの朝食プロセス、慣れたものだ。つまるところ、さっさと腹に入れ、次は日課のゴミ出し。
 外はきっと20センチ以上の積雪だろう。凛太郎は長靴を履いて、麻伊が昨夜玄関先に出しておいたゴミ袋を抱え、車の轍(わだち)を歩み外さぬよう公園横の集積場所へと向かう。道中には新聞配達と、あとは二つ三つの足跡しかない。