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33粒のやまぶどう  (短編物語集)

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「おい、目を覚ませよ」
 善行は身体を揺すられ、覚醒すると、同じ年頃の若い男が目の前にいる。「俺、保険金詐欺のマサってんだ。お前も神が飼ってる獣に食われたんだな」と一人頷いている。

 そんなことを突然言われても善行はさっぱり解らない。まずは居場所確認で、「ここは、どこ?」と訊くと、「要は、口の中に幸と書く――、ひとやだよ」と兄ちゃんが指差した。善行がその方向を見ると、頑丈な鉄格子が組まれてあった。
「えっ、ここ、牢屋ってこと」

 この瞬間、善行は母のメモ、『圉』から生き直せ、を思い出した。つまり圉という字はひとやと読み、監獄のことだったのかと納得した。それにしても口は鉄格子で、その中に幸せがあるとは、皮肉だ!

 しかし、母は伝えたかったのだろう、鉄格子の中にお前の将来の幸せがある、その圉(ひとや)で今までの悪行を反省し、生き直せ、と。そんな解釈に至った善行に、保険金詐欺のマサと呼ばれてる男が「ヨッシャー、そうしなはれ!」と親指を立てた。

 ところで、みなさん、最近巷での噂話を知ってますか?
 純真な子供が大人へと成長した途端、悪に手を染める。そんな青年たちの犯罪が増えている、と。

 育児の神、鬼子母神(きしぼじん)は社会と子供たちの生涯を守るため、「若い悪人たちに改心させよう。だから一旦地底の牢獄、圉へと引き落とせ!」と、神獣の『穴』に命じたそうな。