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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「夕美」 第六話

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こんな会話を交わして二人は偶然の再会をつかのま楽しんだ。
別れ際に俊之はまた会いたいと雅子に言った。その言葉がいけないことだと知りながら雅子は小さく「はい」とだけ返事をした。
教えられた電話番号は最近普及し始めた携帯電話の番号だった。
男と女は誘い誘われるようにして会っているとお互い家庭があることを忘れて本能の赴くままに身体を重ねて行く・・・
雅子も例外ではなかった。

夫との夜の生活が無くなっていた雅子にとって、憧れていた俊之との時間はすべての不満を吹き飛ばしてくれるものに変わっていた。
俊之も身体の弱い妻との行為よりも雅子のそれは激しくより男性を奮い立たせてくれた。
そんな時間が過ぎて何年か経ったある日、俊之は雅子から夫の妹が亡くなって子供を預からないといけなくなったから、今までどおりに会えなくなるかも知れないと愚痴をこぼされた。
出て行ってほしいけど住むところが無いから無理だとも愚痴っていた。

お手伝いが辞めて家のことがおろそかになっていた俊之は、雅子にそのこどもをお手伝いとして住み込みで引き取ってもいいと持ちかけた。
夕美はこの時俊之と雅子の仲を邪魔する存在として扱われていたのだ。
そんなことも知らずに俊之を尊敬して働きに入った夕美を雅子はどんな思いで見ていたのだろう。
この日雅子の浮気を目撃した夕美はそんな背景も知らず、ただひたすらに見てしまったことを後悔していた。
正月の誠一郎の優しさに感激した夕美の心は義父への憐みの感情に苛まれて言葉を失ってしまった。
作品名:「夕美」 第六話 作家名:てっしゅう