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きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
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いつになったらリップはかわいくなるのか…。

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リップ(本名;犬)との生活が始まった。
いざ欲しくて買った犬とどう向き合えば良いのか…。
先ず、かわいくないから始まってしまったのだから、かわいいと思い込むことは出来ないので、かわいくないまま始めるしかない。

来て次の日にうんちに血が混じっていた…。
これは大変だと、ペットショップで聞いていた動物病院に連れて行くことにした。
予防接種やら狂犬病の注射やらがあったけど、先生曰く、
『先ずは体の中を整えないといけないので、予防接種は元気になってからで良いですよ。』
となった。
私は二日目でこの犬は早く死ぬと思った。
そしてそこから気持ちが変わった。
かわいくないけど、折角生まれた命だから、私が出来る限り体力を付けてあげて丈夫な体にしようと決めた。

しかし調子が悪いので、夜中に何度も私は目を覚ますこととなった。
気になって気になって、ハッと目が覚めては小屋に行って犬が息をしているか様子を見る。
お腹がリズムよく動いているのを見て、“よし。”と肯き眠る。
それが二週間続いた。
彼氏が私の姿を見て、
『顔が真っ青だよ。』
と言った。
私はそう言われるまで全く気付かなかった。

犬の薬が二週間分だったので、二週間経ったらまた病院に来てくださいとのことだった。
二度目の病院で、私は先生に、
『犬がかわいくないです。』
と真っ青の顔で言った。
先生も先生の奥さんも驚いて一瞬言葉が出なかったようだ。
奥さんがリップに近付きリップを触りながら、
『こんなにかわいいのに、どうしてそういうこと言うの~って言わないと。…こんなにかわいいじゃないですか~。』
と一生懸命私は諭(さと)された。
私は首を横に振った。
先生が彼氏にため息を付いていた。
そして先生が、
『欲しいと思って犬を飼うって決めたんだから、そこはわがままは言えませんよ。』
と言われた。
私はそれも分かっているから無言で肯いた。

すぐに病院に行った甲斐もあってかリップはすぐに元気になった。
ほとんど寝ているけど、起きてる時は小屋から出しておもちゃで遊んであげた。

散歩でだんだんとコーギー仲間も出来て行った。
しっぽ付きというところで、いろんな飼い主さんから、
『しっぽ切らなくて良かったねぇ~。痛い思いをしなくて良かったねぇ~。』
と言われてはいたけど、かわいいと思うことは出来なかった。

それでもだんだん慣れて行ったけど、やっぱりいつまで経ってもかわいくなかった。

そんなある日の休日、彼氏がブチ切れた!!
『二人とも、いい加減にしなさーーーいっ!!二人ともここに来て座りなさーーーいっ!!』
と言われ、彼氏の前に私は正座リップはお座りをさせられた。
『いつまで経っても仲良くしない。いつまで経ってもあいちゃん(仮名)はかわいくないって言い続ける。』
と言われ始めた。
彼氏の怒りに私は怖くなって、彼氏をチラッと見てはリップの方を見て…としていたら、リップと目が合った。
どうもリップも同じことを思っていたらしく、リップは上目遣いで彼氏を見ては私をチラッと見ていた。
そして彼氏が、
『二人とも仲良くしないので、強制的に一旦引き離します。』
と言い出した。
私は目が点になり、口が開いてしまった。
これはいかんと思った私は、
『仲良くします。仲良くします。ねっ、リップ仲良くするよね。ここで約束して!!』
と彼氏とリップにすがった。
しかし彼氏には全くきかず、
『何を言ってもダメです。もうそう決めました。』
と言われ話は強制終了となった。
私はリップに、
『あいちゃんに、バイバーイするんだよ。どうにかこの状況を止めないと大変なことになるよ。』
と伝えたところ、バイバイがきいたようで、リップが意味も分からずか慌てだして、何故かトイレで用を足した。
そしてリップに、
『トイレちゃんと出来たよ。』
という表情をされた。
私はそんなリップに、
『今は違う。』
とだけ言った。

そしてしばらくして彼氏から魂胆が発表された。
私とリップを一旦離れ離れにするために、リップを病院の先生に預けて強制的に旅行に行くことになった。
それもグアムだった。
理由の一つは、帰りたくなっても帰られないからということだった。
前々から旅行に行きたいという話はしていたが、こんな理由となると肯けなかった。
そんなことはお構いなしに、話は進められて行った。
私もリップも途方に暮れていた。

そして初めてリップと離れることとなったのがリップが一才半の時だった。
病院へと連れて行った。
リップを先生が連れて行こうとするところを見ていた。
先生の考えでは、“飼い主さんがいる状態で連れて行かれて、また犬を迎えに来た時に同じ場所にいることで、安心を与えられる。”ということだった。
台の上のリップを先生が抱っこした時に、リップが爪を立てて台を掴もうとしたので、先生がその手も抱きかかえたら、今度は目を見開くほど力を入れて顎を台に押し付けて連れて行かれないようにと尚もあがいていた。
その光景は何年経っても覚えている。
すごかった~。
何があっても動じない先生が、リップの行動に目をギョロッとさせるほどその時は動じていた。
リップを何処かに連れて行った後、先生が戻ってきて、顔を引きつらせながら、
『大丈夫ですよ~。気を付けて旅行に行って来てください。』
と言った。
あの後何があったんだろうか…。
リップより先生が心配になった。

そして病院の先生に預けて、病院を出て車に乗って、車が動き出す前に私は泣き出した。
『リップがいない~。リップがいない~。』
と慌てだした。
彼氏は先生のように動じずに、
『やっぱりこうなると思った。』
とニコニコしながらそう言った。

そして一週間ほどの旅行中、何度も私は、
『帰りたい帰りたい、リップのところに帰りたい。』
と涙は流さずにそう言っていた。

やっとこさ旅行から帰って来て、そのまま病院にリップを取りに行った。
リップがどっからともなく走ってきた。
先生は、“同じ場所で安心…。”と言っていたのに、全然違うところから犬が走って来た。
でも私に気付いてない。
先生に誘導されながら私に気付いた。
しっぽを振りながら足元まで来た。
先生と話していたのに、リップが抱っこ抱っこと私の目の前で二足で立ってそう言う。
何度も、
『先生とお話してるからダメ。』
と言ったのに言うことを聞かない。
こんなことは初めてだった。
リップからこんなに自分のわがままを言ったのは…。
そして抱っこをしてあげるとその瞬間一度だけ私の顎を小さくペロッと舐めた。
それも初めてだった。
舐めたらダメと教えていたので、私は驚いた。
どうやら本当は舐めたかったのかもしれない…。
そしてピタッと興奮は止まりしっぽの振り振りも止まって、短い両腕で私の首にしがみついていた。
引き離そうにも引き離せないほどの力だったから私は諦めた。
その格好のまま先生と話した。
ガチガチに固くしがみついているので、私が肯く度にリップも同じ動きにならざるを得なかった。
滑稽だっただろう。

その時から急にリップをかわいいと思うようになった。
その日から二週間ほどは、私がちょっとでも部屋の中を歩こうものなら常にくっついて来た。